フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-06-04-Mon-22-56

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?/古川日出男/文芸春秋

第二次世界大戦中、日本はアメリカ領土である小さな島ふたつを占領していたが、米軍の攻撃により、日本軍上層部は全員撤収計画をうちたてた。濃霧にまぎれての艦隊への乗り組みは成功し、ふたつの島からは日本軍が消えた。
しかし、犬は残された。
4匹の軍用犬が残された。
1匹は北海道犬の「北」、海軍所属。
2匹はシェパードで「正勇」と「勝」、陸軍所属。
もう1匹は元アメリカ軍所属の軍用犬で「エクスプロージョン」。
いずれも鍛えられた犬たちだった。そしてこの本はこの4匹を祖にした犬たちの物語。
日本軍の手を離れた4匹はそれぞれの運命を辿り、そしてその子孫たちはさらに数奇な人生を辿ることになる。
アメリカ、アラスカ、ソビエト、南米、ベトナム・・・・世界をまたにかける強くたくましい犬たち。
軍用犬として十分な素質をもち、その能力を発揮させて生きた犬。
戦争の最前線で戦い、死んだ犬。
名誉の負傷を負い、勲章を受章した犬。
伝説といわれるソリ引きになった犬。
野犬と呼ばれ、ひたすら逃げ続けた犬。
コンテスト入賞の常連となった犬。
マフィアの飼い犬となった犬。
優秀な麻薬探知犬となった犬。
そして、ソ連軍将校に見込まれ、北の大地の片隅でひたすら人間を襲う訓練をさせられた犬。
元を辿れば4匹の祖に行き着く犬たちの不思議な運命が描かれた一冊。
これは犬たちの、犬たちによる現代史。

第二次世界大戦~東西冷戦締結に至るまでの歴史が、犬の、いや、それを超越したものの視点から描かれます。
『アラビアの夜の種族』以来の古川本だったのですが、いやはや、さすがは『アラビア』を書いた人。これまた読んでる体温の上がりそうな、そして読書体力(今作った造語)を消耗する本でした。

主に物語の軸となるのは冷戦時に組織されたソ連の軍用犬養成施設の局長とその仲間の思惑・・・ですが、そこに至るまでの道のりが、犬たちの運命がすごいです。
結局何匹の犬が登場したか、数える気にもならないのですが、それらすべて元を辿れば最初の4匹の犬だというのがさらにすごい。犬に関する知識がほぼ皆無の私は、単純に「犬って多産なんだなぁ・・・」と関心してしまいました。
1匹1匹の人生がまた壮絶です。人間の都合であっちにいったりこっちにいったり、それでも犬たちはしぶとく生きようとします。本能の命ずるがままに。

犬に語りかけるような口調の地の文が印象的です。
犬に対して「お前は~」というように語りかける文章は、人間よりもむしろ犬視点。いや、犬の神とでもいったほうがいいのでしょうか。
スプートニク号打ち上げを「イヌ紀元ゼロ年」とする発想が面白かったですねー。

それにつけても、とても細かいところまで書き込まれているために、一体この物語のどこまでが史実でどこからがフィクションなのか分かりません。軍用犬の歴史というのも・・・・この人の話なんだから、真に受けちゃ駄目なんだ、と自分に言い聞かせながら読みすすめていましたけれども、実際どうなんでしょうか。そこまで犬を重宝していたのでしょうか?なんだかあまりイメージがわきませんが・・・ちょっと調べてみたくなりました。

それはさておき、『アラビア~』同様にちょっと見はとっつきにくい本のようですが、これまた『アラビア~』同様に、いざ読んでみると意外と読める本でした。
「難解」という人もいるようですが、とにかくめまぐるしく変わる各犬に焦点を絞って読んでいけば着いて行けるかな、と。
文体も飽きさせませんし・・・韻を踏んでいるような、遊んでいるような文体は好き嫌いがわかれるかもしれませんが、個人的には好きですね。リズムがいいので。

「古川日出男はすごい!」という認識を新たにしましたが、この人は体力のある時じゃないと読めないなぁ、と思い直したのもまた事実。
「ここが面白い」「ここがヨカッタ」なんていう細かいつつき方ではなく、物語の波に呑まれ、翻弄される感覚がクセになる作家さんです。
翻弄されてみたい方は、是非どうぞ。
骨のある、読み応えのある本を読みたいという方にはオススメです。

ベルカ、吠えないのか? ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男 (2005/04/22)
文藝春秋

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