フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-03-16-Fri-09-48

夜のピクニック

夜のピクニック/恩田陸/新潮社

それはそれは世評の高かった本書、遅ればせながら読了しました。実は恩田陸を読むのはものすごく久しぶりのことだったのですが、ううんなるほど、評判どおりの大当たりでした。

地方の進学校が舞台。
主人公は高校3年生の貴子。貴子が通う学校には、年に一度開催される「歩行祭」という行事があった。全校生徒で丸一日を歩きとおすという伝統行事なのだが、肉体的にも心理的にも辛いこの行事を通して、生徒たちは様々な体験をする。
仲のいい友人とふざけながら、普段なら言わないようなことを漏らしてしまったり。独り黙々と歩きながら、今まで見えていなかった自分自身を発見したり。

作中に登場するのは、ほとんどが「北高の3年生」なので、当然「卒業」と「進路問題」が重要な問題になってきます。そしてだからこそ全体の空気はセンチメンタル。

高校生活の中に存在する「歩行祭」という非日常は、高校生である「今」しか体験することのない非日常であり、そしてそれはそのまま高校生活を凝縮したような1日でもある。
歩き続ける中で「早く終われ」と思ったり、「こんな風に皆で歩くなんて今しかないんだ」と思ったり、「最後に一緒に歩いたのがこいつでよかった」と思ったり、「ここにあの子が居たらな」と思ったり、そして「いつまでも歩行祭が終わらないで欲しい」と思ったり・・・

主人公はあくまで貴子ですが、これはこの物語の3年生たち全員が主人公だといえます。
マイペースのように見える貴子が実は他人に引け目を感じがちな少女だったり、その異母兄弟である融は、先を見据えるあまり余裕のない少年だったり、貴子の親友である美和子は才色兼備であるあまりに自分が打算的であることを自覚していたり、融の親友である忍はクールを装いながらとても細やかな気配りができる人だったり・・・書き出したらキリがありませんが、ひとつ思ったのは1人1人の多面的な性格を描いているということ。
またそれは「悪人がいない」ということにも繋がります。
ちょっと感じの悪い同級生や、空回りしている行動をする人も登場しますが、その彼らも100%の悪意でもって行動しているわけではないのです。
だから極めて印象はさわやか。人によっては「甘すぎる」し「現代モノとしてリアリティがない」と感じる人もいるかもしれません。

ですが、断言します。
地方都市の高校生は、今でも結構こんなもんだぞ、と。
さすがに一昼夜をかけての「歩行祭」はありませんでしたが、私が通っていた高校では「全校生徒によるオリジナルダンス」が体育祭の恒例イベントでした。7月という真夏に開催される体育祭に向けて、今思えば不思議なくらい毎日毎日練習していたものです。必ず倒れる人間が出るのですが、それでも全校生徒ダンスは毎年行われるのです、そう、もちろん3年生が中心となって。
だからかもしれませんが、この『夜のピクニック』の雰囲気も懐かしいものとして感じることができました。

体力的には辛いし、暑いし、早く終わってほしいのに、その中でも「こんな風に何百人もの人間と何かをすることって、きっともう二度とない」ということを感じてるんですよね。
「今しかない」ということ。
そのことを、この本に登場する3年生たちは、皆すごくよく分かっているんです。でもそれは当時の自分たちだって、口にこそしなくても(だって気恥ずかしいでしょ)、皆薄々分かってたことなんですよね。
自身の高校時代と重ね合わせてしまう作品でした。

あそうそう、「パソコン」「携帯電話」など、時代を特定するような単語が出てこないのも技ですね。そうすることによって、どんな年代の人でも自分の時代のこととして読み取ることが可能になりますもの。これを自分の母親世代に読ませたとしても、きっと懐かしい時代のこととして感じることでしょう。
今も昔も高校生が感じることや思うことというのは、意外と大差ないんじゃないかな、などと思ったりしてしまいました。

普遍的な青春小説だと思います。
広く長く読んで欲しい一冊。でも高校生が読むよりも、大人が読んだほうがグっとくるかな?今まで読んだ恩田陸作品の中で一番好きかもしれません。

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