フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

メニュー目次メニュー目次メニュー目次メニュー目次
-----------------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2006-12-31-Sun-11-53

いつか王子駅で

いつか王子駅で/堀江敏幸/新潮文庫

翻訳家兼教師の主人公が、東京王子でのいろいろな人たちとの交流を描いた長編。
とても薄い本なのですが、なにしろ読むのに時間がかかりました。それはなにも「ストーリーが分かりにくい」とか「難しすぎてよく分からない」のじゃないのです。自分でも上手く言えないのですが、なぜか「眠気を誘う」本だったんですね、私にとっては。

ストーリーらしいストーリーはありません。
主人公が銭湯で出会う「正吉さん」。
珈琲を出す居酒屋「かおり」。
大家の「米倉さん」とその娘「咲ちゃん」。
王子に住む人々とのささいな交流と、それから派生して主人公の心に浮かぶ様々な事柄。書いてあるのはそれだけなのに、それだけのことが不思議と心地よくて、一気読みできない本でした。

主人公が思うことのひとつに、「手足の思考能力を大切に育ててきた人々」への敬意があります。
文筆業で生計をたてる主人公は、いわゆる「職人」の人に会い、彼ら自身の経験から語られる事柄に対して「素直に参ったと言いたく」なります。
実体験ではない書物から得た「知識」とは違う、彼ら自身の「知恵」に対する敬意(それは主人公の劣等感ともいえると思う)というのは、私自身にも身に覚えのあることで、共感してしまったり。

あとは文学ネタや競馬ネタがとても多いです。
そういうのに造詣のある方なら、もっと楽しく読めるのではないでしょうか?
全く知らない私でも「テンポイント」に関しては「へぇー」と思いながら興味深く読めました。知らないジャンルにもいろんな面白エピソードってあるもんなんですね。無知って勿体無いなぁと思わされました。

とはいえ、そんな競馬ネタ部分の大半は「ふぅん」程度に読んでいたのですが、それがラストであんなふうに繋がってくるとは・・・正直、この本で「盛り上がる」ことはなかろうと思っていたのに、ラストの「咲ちゃん」の疾走シーンはじぃんときてしまいました。

日常の積み重ねであり、文の大半は主人公が「思うこと」で、特にドラマチックな事件も涙するエピソードもない話だというのに、なぜか心地いい空気が流れる世界です。
エンタメ文学読みの仲間(私もですが)には薦めにくい本かもしれない。
面白いの?と聞かれて、率直に「面白かったよ!」とはいえないような気もするのですが、読んだ後に『「かおり」で珈琲飲みたいなぁ。カステラ食べたいなぁ』と思ったことは事実。
主人公の感慨に共感するところも多々だし、ラストに繋がる一連の持っていき方もうまいなぁってかんじですね。

他の方のレビュー等を見るに、「この本の良さがわかる年齢で読めてよかった」「この品格!まさに文学!」なんて書いてあって、やはり私にはこの本はまだハードル高かったのかなぁ・・とも思いますが、でもいろいろ思うところはあったのでヨシとします。数年後に読み返してみるとまた違った感想がもてるのかもしれない。

でも何より好きなのはこのタイトルでしょうか。
これって『いつか王子様が』から来ている・・・と思っていいんでしょうか。(違ってたら恥ずかしい)
なかなか洒落てるなぁと思います。
うん、好き好き。

読了日:2006年12月17日

COMMENT

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

TRACKBACK

http://funafunababy.blog89.fc2.com/tb.php/39-ba5c40d8



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。