フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2006-12-31-Sun-11-49

青空の卵

青空の卵/坂木司/創元推理文庫

ひきこもり探偵・鳥井と、助手役の坂木による日常ミステリ。
短編連作ということもあいまって、北村薫や加納朋子を連想せずにはいられません、が。これはミステリであってミステリではない。
物語のテーマはむしろ、「鳥井と坂木の関係」です。

坂木は大多数の人間から「人のよさそうなお兄さん」と評される27才、サラリーマン。ごくごく平凡な彼にとって唯一の輝かしい存在、それがひきこもりの友人・鳥井です。2人は中学時代からの友人ですが、はっきりと尋常ではない関係にあります。
鳥井は子供の頃から美しい顔立ちで鋭い頭脳の持ち主でした。さらに歯に衣着せぬストレートな物言いにより、「孤高の存在」として坂木の心を虜にします。
「なんとかして彼と友達になりたい」と思った坂木は、「孤高」であるがゆえにイジメを受け、心の弱っていた鳥井のタイミングを見計らった上で「友達になろう」ともちかけます。このタイミングなら鳥井は断らないだろう、という、それは坂木の計算の上でした。

そして希望通り、いえ、坂木の期待以上に鳥井は坂木を慕うようになります。もはやそれは「友人として」というよりも「母と子のように」。「鳥井は僕という一神教の信者だ」と坂木が表現するほどに、鳥井は坂木に依存するようになるのです。

そしてこの物語のメインは、一見すれば「ひきこもりの友人を支える面倒見のいい好青年」である坂木の内面にあります。

鳥井の世界の中心にいるのが自分であるという自負と罪悪感。
鳥井への独占欲の充足と、彼を外に出さなければという相反する感情。
外の世界と接触し、精神の安定しつつある鳥井への喜びと、外の世界に出てしまえば自分以外の人間が鳥井の世界へ入ってくるのだという不安、嫉妬。
鳥井の世界の中心は坂木ですが、同時に坂木の世界の中心もまた鳥井なのです。

以前私の好きな作家さんが「依存しあって何が悪い。他人に依存することが出来ない自分だからこそ、不健康に依存しあう関係に惹かれるのだ」と言われていたのですが、全くその通り。
「彼(彼女)がいなければ生きていかれない」という状態は一個の生物としてはすごく弱い状態なのでしょうが、そんな存在が居るということは、きっととても幸せなこと。

「萌えだよ~」という貸してくれた友人の言葉に「そうか、萌えか」と思いながら読み出したのですが、想像以上の依存っぷりに、幾度となくにやけさせられました。でも「萌え」というのとはちょっと違うかなぁ。
いえ、なかなか美味しい設定だとは思いますけども。ストレートすぎるからでしょうか?もっと出し惜しみしてくれてもいいのに・・・なんて思っちゃいます。
「男同士の過剰な友情」というのはとてもキャッチ―なテーマだと思いますが、懇切丁寧に「相手への想い、自身のジレンマ」を語ってくれる本書は、そこらのBLよりも、ある意味とてもBL的なのではないだろうか、などと思ってしまいました。

ところでこの作者さん(主人公と同じ名前という有栖川有栖様式)って女性なのでしょうか?「友達に対する独占欲」なんて、とても女子っぽいなぁと思うのですが。ええ、身に覚えアリアリです・・・。

読了日:2006年11月15日

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