フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2008-09-15-Mon-21-42

夜愁

夜愁/サラ・ウォーターズ著 中村有希訳/創元推理文庫

結構前に読んだ本の感想です。
翻訳モノってあまり読まないのですが、唯一買っちゃう作家がサラ・ウォーターズ。相性がいいのかもしれない・・・それとも訳があうのでしょうか?翻訳モノだということを意識せずに入っていけるんですよね。そして今回も一気に読んでしまいました。

物語の舞台は第二次世界大戦終結も間もないロンドン。
登場人物は戦争の爪あとも残る大都市で、それぞれの心に癒えようのない傷を抱えて生きていた。
病院の屋根裏に住むケイ、
女流作家のジュリア、
結婚相談所の職員ヘレンとヴィヴィアン、
服役後工場で働くダンカン。
彼女ら、彼らは自らが知ることのない縁によって、時に不思議な関係を持ち、時に全くの無関係に生きている。ただ自分の信念と、感情によって。時にそれが自分でも制御できない暴走をはじめ、結果として後悔することになったとしても。

作品中の時間の流れは大戦後(1947年)から始まり、徐々に過去にさかのぼります。
はじめはまったくバラバラに思えた各人の関係が過去にさかのぼることによって明らかになり、「ああここでこの人とこの人が出会って・・・この人は昔こうだったんだ・・・」という風に、読み進めていくうちに冒頭の各人の状況が理解できるという流れになっています。
それがこの作品のミステリー的なところでしょうか。

『半身』、『茨の城』と、ガッツリとした世紀末ミステリーを描いてきたサラ・ウォーターズが一気に時代を現代にして書いたこの作品は、時代が20世紀になったというだけが目新しいわけではありません。
ゴシック的な世界観で一人あるいは二人のヒロインが謎に巻き込まれ、葛藤しながらも前進していくという前2作と違い、この『夜愁』はメインとなる人物が沢山おり、その数だけ視点がバラけます。
また核となる殺人や犯罪があるわけではなく(人死や犯罪まがいのことはありますが)、あくまでもそれぞれのキャラクターの人生を平行して描くことによって奥行きをだしている、というか。
『茨の城』みたいな昼ドラ的めくるめく展開、というのは期待しないほうがいいかもしれません。まあ『夜愁』も十分ドラマチックですが。

そして舞台となる時代が19世紀末から大戦前後に移行したからといって、書き込みに変化があったというわけではありません。第二次大戦なんて現代の我々から見れば十分歴史的。その時代のロンドンの情景描写は、十分に読み手の想像力をかきたててくれます。
煤や砂埃にまみれ、都市ならではの喧騒と交錯にまみれた世界が、まるで映画を見ているように。

もちろんサラ・ウォーターズ特有の「女性同士の恋愛感情」もたっぷり描かれます。本作は特にそのへんの描写に力が入っていたかも。三角関係だったり、そういう女性同士の(あくまでも)友情だったりとか、そう例えば「スカートをはきたくないがためにガソリンスタンドで働く」なんてキャラクターも登場するのですが、そういう些細なところにも感心するのです。

大戦前後、ということで、本作は全体的に(いやまあサラ・ウォーターズの他の作品でもだけど)暗い雰囲気です。後半以降、空襲におそわれるロンドンの描写はなかなかに凄惨。
でもだからこそ、最後のシーン・・・作中時間としては最も「過去」にあたるシーンの輝きが、素晴らしいものとして印象に残ります。
運命の相手と出会ったという喜びと感動のシーン。
しかし読み手としてはその後の二人がどのような結末を辿るのかをすでに知っているわけで、だからこそいっそうそのシーンの輝きが切なくて・・・。

あー、サラ・ウォーターズの次作も楽しみです。
買っちゃいますねえ、きっと。

夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)
(2007/05)
サラ・ウォーターズ

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