フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-10-29-Mon-21-17

空を見上げる古い歌を口ずさむ

空を見上げる古い歌を口ずさむ/小路幸也/講談社文庫

第29回メフィスト賞受賞作。『東京バンドワゴン』が評判の作者、気になっていたのでデビュー作を買ってみました。

32歳の凌一は平凡な勤め人。妻と一人息子とともにごく普通の幸せな日々を送っていたある日、一人息子の彰の身に異変が起こった。人間の顔が皆<のっぺらぼう>に見えるというのだ。
その言葉が凌一に20年前に別れたきりの兄・恭一のことを思い出させた。
「いつか、お前の周りで、誰かが<のっぺらぼう>を見るようになったら呼んでほしい」と、そう言い残して家族の前から姿を消した兄。
20年ぶりに連絡を取った兄は、凌一から彰の状態を聞くとすぐにやってきた。そして凌一と彰を前に、兄自身の幼い頃のことを語りだす。そう、実は恭一もまた人々の顔が<のっぺらぼう>に見えてしまうのだった。
兄が語る昔話、それは小学生だったころのこと。子供たちが野原で遊び、駅員さんとキャッチボールをしたり、困ったときにはおまわりさんを頼ったりすることが許されていた時代のこと・・・。

本編の大部分は、この兄・恭一が語る「昔の話」が占めています。いたずら小僧やガキ大将という単語がリアルタイムで生きていた少年時代の話は日本的ノスタルジーに溢れています。それこそがこの物語の大きな魅力であるとともに、これは「メフィスト賞」から想像するいわゆる「ミステリ」という範疇ではないな・・・とも思いました。
(いや正確にはメフィスト賞は別にミステリ対象の賞ではないんですけどね、なんというか、イメージとして)

<のっぺらぼう>だなんて突拍子もない設定がメフィストっぽいとも言えますが、これはミステリというよりはファンタジー要素が強いように思います。恩田陸の『光の帝国』を思い出したりもしました。
一応兄が語る昔話の中での重大な事件は解決したのですが、そこで語られた<のっぺらぼう>の謎、世界の秘密、というものはぼかしたままにしてあります。ひょっとして続編もあるのかな・・・とも思いましたが、ちょっとだけ消化不良でした。でもこれは謎を全て解き明かさない、ファンタジーというか民俗学的な世界観なのだから、それはそれでアリなのかも・・・とも。
読んでいる途中はどういう収集の付け方をするのか不安だったのですが、無理やりにでもまとめてみせてくれたので一安心。<違い者>の設定も、ああそういう風に現代への風刺に繋げるのねっていうかんじで、なんというか、きちんとした作家さんだなぁという印象です。

空を見上げる古い歌を口ずさむ 空を見上げる古い歌を口ずさむ
小路 幸也 (2007/05/15)
講談社

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