フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2006-12-31-Sun-10-55

重力ピエロ

重力ピエロ/伊坂幸太郎/新潮文庫

刊行時、いろいろな媒体で褒められていた本書。
「心震える」とか「溢れる涙」といった常套句で煽られることが多かったように思いますが、読んだ感想は・・・・じんわりとはしたけど、泣きはしなかったな、というところです。
それは決して批判ではなく、逆に本作で繰り返し述べられる「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」ということに符合しているのだといえます。

ストーリーは、遺伝子関係の仕事をする主人公「泉水」、落書きの清掃を生業にする弟「春」、癌で入院中の二人の父、この一家を軸にした謎解きもの。
一見円満なこの一家には、実は触れてはならないタブーがあった。
それは、「春」が今は亡き母親がレイプされた末に生まれた子供だということ。
それは近隣の住人も知るところであり、兄弟も長じるにつれて知る事実となった。
しかし母も父も平等に二人を愛し、慈しんで育てた。
「春が笑えば家族は幸せだった」と、泉水が繰り返し語るように。

ある日、春が泉水に放火事件が頻発していることを話す。
そしてその現場の近くには必ずひどい落書き(グラフィティアート)があるということも。
何らかの関連性があると言い張る春に、「考えすぎだ」という泉水。
しかし推理小説好きの父(入院中)まで乗り気になり、いつのまにか泉水本人も連続する落書きと放火事件の謎を追いかけるようになっていく。
暗号めいた奇妙な符号、謎の美女までが現れ、事件は複雑に絡み合う・・・。

というお話。
テーマはずばり「家族」であり、また罪とは、殺人とは、許すとは?ということでもあります。

本作の出だしは「春が二階から落ちてきた」という文章から始まるのですが、この文章がとても綺麗で印象的。
解説の北上次郎さんも言及されていますが、伊坂さんは同じ言葉を繰り返し用います。
それが読み手にとても強い印象を与えるのですよねー。
本作中にも格好いい言葉がたくさん出てきました。
そのうち「伊坂語録」が出来ますね。
もしかしなくても自分で書き留めている人だっていそうです。

北上さんの解説は頷くことばかりだったのですが、特に納得したのは主人公の造形。
どこか達観し、飄々とした雰囲気をもつ伊坂キャラクターの中で、主人公の泉水だけは平々凡々とした人物像になっています。
それは弟・春(容姿端麗、芸術的才能あり、時折とっぴな行動をおこす)と対比させるためでもあるのでしょうが、この泉水の人間臭さが、伊坂作品のもつ浮世離れ感に歯止めをかけ、この作品を「家族物語」に落ち着かせているのだと思います。
(もちろん北上さんの言うとおり、泉水だって決して平凡な人間ではないのですが)

個人的にはエンディングの手前、泉水が仙台銘菓を春に手渡すところにニヤリとしました。
伊坂さんの、こういうところが好きなんです。
ちょっとはぐらかす、というか、変化球というか。
まさに「大事なことを陽気に伝える」なわけですね。

タイトルの「重力ピエロ」は、説明しようとしても「読んでください」としか言いようのないものですが、人生には確かに重力から解き放たれる瞬間があるのだと、信じたい気持ちになりました。

読了日:2006年7月7日

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