フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2006-12-31-Sun-10-30

夜市

夜市/恒川光太郎/角川書店

友人の透子さんから回ってきました。
彼女いわく「独特の世界を築ける作家」さんだということで、自ら積極的に読むことはないだろう「日本ホラー小説大賞受賞作」を読んでみることに。
読んでみると、いえいえこれはホラーというよりは幻想小説。
なので、臆することなく読めました。

あらすじは、こう。
大学生のいずみは、高校時代の同級生・祐司から「夜市」に行こうと誘われる。二人で出かけた岬の森では、確かに「夜市」と呼ばれるものが開かれていた。
それはこの世のものならぬ市。
一つ目ゴリラが刀を売り、棺桶職人の前に腐乱死体が立ち尽くす。
髪の変わりに植物を生やした少女が語る、「ここに迷い込んだら、買い物をするまで出ることはできないの」。

一体どういう理由でこのように恐ろしいところに連れてきたのかと祐司に問いただすと、彼は幼い頃の思い出を語りだした。

「自分は子供の頃、弟と引き換えに野球の才能を買ったのだ」、そして「弟を買い戻すためにここへやってきたのだ」と。

現実と異界の世界を描いた幻想的なオカルト小説。
最初に「ホラーではない」と思った、といいましたが、読みすすめるうちにだんだん怖く、そして悲しくなってしまいました。
ネタバレを避けようと思うと、言いたいことがいえなくなってしまうのですが、前半では兄である祐司サイド=現実サイドが、後半では弟サイド=異界サイドが軸として語られます。
この弟の話が切なくて、悲しくて。

今市子の『百鬼夜行抄』も現実と異界にまたがる話で、ヒューマンな中にも時折「こちら(人間世界)はこちら、あちら(異界)はあちら」というように、ふたつの間には明確なボーダーがあるのだということが示されますが、『夜市』もその通り・・・いえ、それ以上。

兄と弟の世界が一夜の「夜市」によってはっきりと分かれてしまったのだということ、たとえ再会したとしてももう元には戻らないということが、残酷なまでにはっきりと語られます。

それは同時収録の『風の古道』も同じ。
こちらは友人とともに異界の道に足を踏み入れてしまった少年の話なのですが、「いったん入ってしまったからには簡単には外に出られないのだ」ということが終始語られます。
何も知らずに外からやってきた少年は、友人とともに脱出を目指す。
それを支える青年は、異界のものであるために外に出ることはかなわない、何があっても。

ファンタジーであるというのに、(だからこそ?)時に容赦のないほどはっきりとしたルールがある「異界」という世界。
どこか民俗学的な雰囲気もする、日本的・土着的な幻想ファンタジーです。
作者の中には、すでに確固とした世界観が成立しているのでしょう。
和風ファンタジーが大流行の昨今ですが、恒川さんの描く異界はシビアなだけにリアリティが感じられます。
他とはちょっと違う雰囲気を持った作家さんでした。

読了日:2006年6月25日

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