フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-06-21-Thu-21-17

五郎治殿御始末

五郎治殿御始末/浅田次郎/中央公論新社

実は時代小説はあまり読みません。歴史は好きなんだけど、ちょっと身構えてしまうのが本音なんです・・・が、そんな私が全く気負わずに読める時代小説が浅田次郎。
これはそんな浅田次郎の、明治前半期を舞台にした侍物語短編集。

侍であった過去を捨て、商人として生きる男。
戊辰の混乱期に自分の命を千両で買い取った男。
誰よりも優秀な天文方であったが、新たな時代に不遇をかこう男。
時代の変革期を乗り越え、地位に恵まれながらもどこか満たされない男。
敬愛する主を失って以降、時が止まった男。
桑名の侍として、一族の長として、幕末の侍として、あらゆる始末をつけた男。

いずれも明治に入って数年後、まだまだ江戸を引きずっている時代の物語です。
もちろん浅田次郎ですから、基本的には佐幕派に偏っています。私はずっと「浅田次郎は新選組が好きだから~」なんて思っていたのですが、佐幕・倒幕というよりも「滅びゆくものの美学、失われゆく日本の美徳」という方が当たっているかなぁとも思います。

今回特に印象的だったのは「暦」です。
太陰暦から太陽暦への一新というのは我々の想像を絶するほどの衝撃だったことでしょう。
1週間(日曜は休み)という単位、1年365日、1日24時間、1時間60分、1分60秒・・・・・一気にこれらを覚えろと言われた当時の人々の混乱はどんなものだったのか、想像もつきません。ましてや変換に当たっては12月の頭に「明日明後日が正月だ」なんて言っちゃうんですもの。かなりむちゃくちゃです。

本作には優秀な天文方だった元侍が登場します。
また時刻を知らしめる砲を打つ役目の軍人も登場します。
維新によって職を亡くした者、維新によって将校に任じられた者という違いはありますが、彼らはどちらも「時」「暦」を掌握する任に携わっており、そして両者ともが「日本の時が失われていく」ことを嘆きます。

もっともそうした強攻策があったがゆえの日本の近代化だというのも確かでしょう。国際基準にあわせなければ、諸外国と肩を並べるのには不都合ですから。
そんなことは分かっているんですけど、それでも消えていく文化を嘆かずにはいられないってのが人の道でしょう。

「泣かせようとしているのが見え透いてて」、
「あざといかんじがするから」、
浅田次郎は嫌いだよ、という人もいるでしょう。
それは分からなくもないけれど、私はその大衆的な部分をこそ好みます。
ある意味、浅田次郎作品こそが「誰が読んでも面白い大衆文芸」へのオマージュだと思う。と言っては言いすぎでしょうか?
「自分が読者として面白いと思えない話は書かない」という浅田次郎には、世代やジャンルを超えた“物書き”としての本質が見える気さえします。
ここまで極めりゃ「大衆的」って言葉もほめ言葉でしょ。
そんなかんじで、またしても次郎に泣かされてしまったのでした。


五郎治殿御始末 五郎治殿御始末
浅田 次郎 (2003/01)
中央公論新社

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