フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-06-17-Sun-19-24

Papa told me

今日は父の日なのだそうです。
言われるまで全く意識していませんでした。例年ならばこのままスルーなのですが、せっかくなので「父と娘」をテーマにした本の感想でも書いてみます。

Papa told me/楱野なな絵/集英社ヤングユーコミックス

「父と娘」といえばコレでしょう。
1987年の連載開始から今もなお不定期に新作が発表されており、某漫画賞も受賞した本作はもはや国民的漫画といってもいいのでは。
しかしながら私がこのシリーズに手をだしたのは結構最近のことなんです。
タイトルだけは聞いたことがあったのですが、微妙にタイムリーな世代ではないのですよね。読者層としては私よりもう少しだけ年上の世代がベースのような。

物語は基本的に一話完結形式で、小学生の知世とその父親であり職業作家である信吉の2人きりの父子家庭日常物語です。
主人公が小学生女子、という設定だけだと単なるほのぼの家族愛ものかと思われそうですが、この知世“ちゃん”が可愛い顔したくわせもの。
なかなかどうして大人以上の毒舌家でありシニカルな視点の持ち主で、世間の常識やつまらない因習にとらわれている「世の中」をクールに見つめています。

実は以前文庫版の感想を書いたのですが、古本屋でコツコツ集めた単行本もほぼ全巻集まったので、改めて思ったことだけを少し追加。
未読の人にこのシリーズを説明する際、「柳沢教授の少女漫画版ってかんじ」と言ってみたことがあるのですが、全巻通してみると「似ているけれど決定的に違う」と思い直しました。一話完結形式、基本的にヒューマンものである、という点では確かに似通っているのですが、主人公のスタンスが決定的に違います。
例えば価値観の異なる人と出会ったとき、柳沢教授なら「何故そういう思考をするのか、非常に面白い、理解したい」と思うでしょう。
でも『Papa~』の知世の場合は「あなたはあなた、私は私。その考え方を通すのはかまわないけど、こっちの邪魔はしないでね。私(と私の愛する人たち)の世界に入ってこないでね」というところでしょう。

柳沢教授の世界は外に「開いて」いるけれど、
『Papa~』の世界は「閉じて」いるのだ、と思えます。私には。
主人公である知世をはじめ、『Papa~』の主役級の人たちは皆確固とした自分と価値観を持っています。それは自由であり独立であり静謐な世界であり・・・とても居心地のいい空間なのであるが故に、その世界を共有できない人(権力におもねる人や目先の損得を優先する人、世間の価値観を疑うこともしない人)に対しては冷徹なまでの拒否反応を示します。

『Papa~』シリーズは今は亡きヤングユー連載だったということもあり、そのターゲットは大人の女性です。長い連載が示すように、その支持は厚いものがあるのでしょうが、一部の人(特に男性が多いよう)にとっては上記にあげたような部分が「鼻持ちならない」と感じさせるようなのも事実。
以前「ちょっと生意気すぎるんだよ」と批評されていたのを耳にしたことがあります。その時は「この作品の魅力を分かってないわ!」なんて思ったのですが、シリーズを通して読んだ今ならその気持ちも分からなくもないかなぁ・・・。
精神的にも物質的にも父の全てを一身に集める知世、
洋服に情熱を注ぎとっかえひっかえ着替える知世、
彼女の世界を肯定し、同じ価値観の大人たちに囲まれる知世。
どんなに大人びていても彼女はまだ世間の何も知らず、愛する父親の手の内で遊びまわっているにすぎないんじゃないの?幻想の美しい世界で生きていられるんだものね?
なぁんてことを、これっぽっちも思わないかと問われれば、それは嘘になってしまいます。(みにくい大人ですから・・・)

でもこの作品はそれでいいのです。
世の中に全くの奇麗事がなければ生きてはいけないでしょう。
理想的な父親像である信吉も、
人形のように愛らしく時に哲学者のように世を語る知世も、
美しく賢いのにどこか夢見がちな百合子も、
強く賢く一人の世界を大事に生きる北原さんも、
その「理想的すぎる」面を全てあわせてこその『Papa told me』。

何度も何度も読んでしまう魅力に溢れたシリーズです。
未読の方、特に「一人で本を読むのが好きよ」という大人の女性には強く薦めたい作品。
傑作集ではなく完全収録の文庫版を発行して、より多くの人たちに読んでほしいと思います。

Papa told me (1) Papa told me (1)
榛野 なな恵 (1988/02)
集英社
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個人的には初期~中期のが好みの話が多いですが、ガーリーだった知世の服装が段々変化していくところも作者の好みの変化を感じて面白いです。

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