フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-06-16-Sat-21-54

崖の館

崖の館/佐々木丸美/創元推理文庫

主人公・涼子には幼い頃からの習慣があった。それは夏休みや冬休みといった休みには必ず伯母の家に長期滞在するということ。
使い切れないほどの財産を持ちながら孤独を愛する伯母の住む家は海を臨む崖の上に建ち、館と呼ぶにふさわしかった。そこには他の従兄弟たちも頻繁に訪れ、幾人かが成人した今も休みをあわせて伯母の家に集まることが恒例となっていた。
自由と孤独を愛する伯母は、涼子や従兄弟たちにとって身近な憧れであり、よき理解者だった。
しかし涼子たちにとってそれ以上の存在だったのは伯母の一人娘・千波。
誰よりも美しく賢かった千波。
伯母の愛を一身に享受していた千波。
しかしその千波は死んだ、二年前、館の建つ崖から転落して。

千波の事故から二年後、従兄弟たちが雪に閉ざされた館に集まったところから物語は始まる。
皆が館に集まったその日から不審な出来事が次々と発生する。これはただのいたずらか?それとも悪意の顕在か?何より千波の事故との関係性は?
社会派ミステリ全盛期にひっそりと刊行された、知る人ぞ知るゴシック・ミステリの再刊行。

ええと、初版は1977年だそうです。
30年前・・・それも納得かなぁ、というところは確かにあります。
なんだかやたらと登場人物が古式ゆかしい。
主人公の女子高生・涼子はいわゆる“ドジっ娘”キャラですし、
浪人生・哲文は論議好きのインテリかぶれ、
女子大生・由莉は気の強いわがままもの、
独身貴族の棹子は家事全般に万能な大和撫子、
青年実業家(を目指している)真一は実直で優しい好青年、
千波の元婚約者・研は大人で優しくそして千波が死んだ後もなお千波のことを想い続けている。
そしてこれらの従兄弟たちは皆総じて「かしこく弁がたつ」のです。
これが本作の一番の特徴だと思いました。
特に千波と哲文がその道に通じているとされるキャラクターなのですが、なかなかどうして他の人物たちも(みそっかす扱いの涼子でさえも)美術・文学に通じている風があります。
衒学趣味といってしまえば話は簡単なのですが、この作品の雰囲気は「薀蓄」というよりも「美術というのは、こういうものよ」という個人的な思想のようなもののように感じられました。
登場人物の口をかりた作家の主義主張なのでしょうが、うーん、正直いって若干独りよがり気味なのは否めません。
「そう思うのはアナタの勝手だけれどね、世の中には人の数だけものの見方があるってことを忘れないで欲しいわ」って突っ込みたくなりました、哲文に。(涼子には悪いけれど、私には哲文の良さがイマイチ分かりませんでしたよ。むしろ真一さんいいです。研さんもいいけど)

ミステリとしては、犯行の動機はともかく、その手口があまりにも偶然に頼りすぎているようなところが気になりました。
あとは身内の犯罪に気づきながらもそれを隠蔽しようとする登場人物たちの心理がなぁ・・・誰も「警察にまかせよう」って言い出さないんですもの。この世界には自分たちしかいないのだ!という世界観ですね、まあ密室ものだし、いいんですけど。
突っ込みどころはあちこちあるのですが、この作品の本質は「トリック」よりも「ゴシック・ミステリとしての雰囲気」でしょう。

佐々木丸美は好き嫌いの分かれる作家だそうです。
私はこれが初の佐々木作品だったのですが、それは確かにそうだろうと思わされました。
現代日本だとは思えないようなシチュエーション、
生活感のない登場人物たち、
頻繁に現れる芸術論、
知性のないものは存在することさえ許されないような閉鎖性、
そして全体に流れる少女的センチメンタリズム。
こういうのがダメだという人は本当にダメでしょう。私は特に嫌いだとは思いませんでしたが、とても好きというほどでもないですね・・・でも犯人の犯行動機の部分、いつも気丈に振舞っていた由莉の従兄弟たちへの鬱屈した感情というところが面白かったです。
リアリティのない(というよりも人間味のない?)キャラクターたちの中で一番リアルに感じられたのが由莉であり、千波に対する言いようのないコンプレックスを抱え続けていた犯人の感情でした。

うーん、読み手は選ぶけれど、ゴシック・ミステリが好き、ちょっと昔風の少女漫画が好き、という人なら読んでみて損はない本かもしれません。
しかしながらうかつに他人様には薦められない一冊ですね。

崖の館 崖の館
佐々木 丸美 (2006/12/21)
東京創元社

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しかし本作中で私がもっとも引っかかったのが、「若く美しい20歳の娘への贈り物が『角兵衛獅子人形』」というくだりです。
角兵衛獅子の置物・・・って、地方のみやげもの屋の片隅においてある民芸品というイメージですよね・・・?それが女子へのプレゼント・・・?
今の感覚ではむしろ「いやげもの(バーイみうらじゅん)」レベルだと思うのですが。うーん、恐るべし70年代。

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