フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-07-31-Tue-18-43

小学生日記

小学生日記/hanae*/角川文庫

ずいぶん以前に話題になっていた本書、遅まきながら読了しました。
密かに気になってはいたものの、あまりにも世間の評判がよくって、逆に読む気を削がれてしまいまして(そういうこと、ありません?)・・・はや幾年の後、こうして手にとってみたわけであります。

作者は小学生女子、しかも現役モデルでもあること。
子供離れした観察力と瑞々しい文章が魅力であるらしいこと。

という前情報を知っての上で読んでみたのですが、・・・・・・いや、実際、よかったです。

「これが小学生か!小学生かあー」と、素直に感心しました。
『人気モデルの日記だよ★』などという商業主義では全くなく、純粋に作文である文章には変な気負いも屈託も見られません。ただ事実を自分の目で見たままを書き、自分が考えられる限りに考えてみたことを書いている。
ただそれだけといえばそれだけなのですけど、その率直さや素直さがとてもスルリと読み手の中に入ってきます。年頃なんだから、もっと変な自意識が出てしまったりするものだと思うのですが、なんでこんなに素直に書けるんだろうなあと、しみじみ。
あとは単純に文章も上手いです。(編集がいじったりしてないと信じています)

いやあ、自分の小学生時代を思い出し、「うーん」と唸ってしまいました。私は読書感想文や作文が大嫌いでしたから。
特に作文は「自分が書いたもの=思っていること を他人(教師)に読まれる」ということに拒否感があって、わざとありきたりで面白みも何もないことばかり書いていましたね。今思えば自意識過剰ってやつでしょう。言いたいことを上手く書けないという事実もはっきりとあったと思いますが。

それにしても率直でまっすぐな作文です。
大人びているようだけど小学生らしい。本人は勿論お母さんもお兄ちゃんもいい味だし(モトイ君ちょっと格好いいよ)。
もやもやして頭がこんがらがった時などに読むといいかもしれないですね。物事をシンプルに見るということを教えてくれる気がします。

小学生日記 小学生日記
hanae* (2005/07/23)
角川書店

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2007-07-29-Sun-22-20

オタク的休日

人生2回目のオンリーとやらに行ってきました。

ええと収穫については何も申しませんが(えり好みするから・・・)、久しぶりにコスプレ女子たちが見れて眼福でした。それなりに満足です。若者のエキスを吸って、気持ち若返りました。

で、帰宅してから昨夜放送されたコードギアスSPを見たのですが・・・・面白かったです。あっちもこっちも暴走して逆ギレしてて。深夜枠とはいえ、よかったのでしょうか?純真なファンが見ていたらトラウマになりそうだとすら思ったのですが、私的には本放送のどれよりも面白かったです。うんうん、いっそのことあのまま一気に終わらせてくれてもよかったのに・・・続編はさらに先なんですね。どうやって収集つけるのかが見ものです。両者相打ちしかないような気がするのですが、そうして皆死んでしまったらCLAMPみたいですねえ。

そしてギアスでささくれた心を癒そうとグレンラガンを見てみたら、こっちはこっちでささくれました。「政治ってのは誰かがけじめをつけなきゃ駄目なんだ」ってロシウの台詞は選挙日当日の今日にタイムリーだなあと思ったり。

最終的に27時間TVで放送された「新選組!ヘキサゴン」で心癒しました。正直メンバーがちょっと物足りなかった感もありますが(だって藤原竜也も勘太郎も山南さんも・・・オダジョーは無理でしょうけど)、放送終了からはや幾年、まさかまた『新選組!』に会えるなんて・・・・!
ここ最近で一番テンションあがった瞬間でした。あの格好見ただけでちょっと泣きそうなんですが、これ何かの病気でしょうか。幸せ病ですか。

そんなかんじでたいそうオタクな休日でした。
自分的には無問題です。
2007-07-28-Sat-22-19

ミ●シィ考

ネット巡回中に、面白い文章を見つけました。

『ミ●シィが“気持ち悪い”と言われる理由』です。

興味深かったのでリンクさせてもらいました。誰もが知ってる大手SNS、ミ●シィ(一応伏せてみた)について。
書き手の方は重度のミク中毒だったこともあるみたいで、本質を言い当てているような気がします。

実は最近職場の後輩がその某SNSを退会したらしいんですよ。何ヶ月か前に入ったばかりだったそうなんですが、「面倒くさくって」だそうです。
私もいまいちを活用してない(結局リアル友人としか繋がってない)ので「ああ、そうなんだ」とだけ返しましたが。

以前TVで見た「中毒主婦」さんのような「それなしには生活できない」という人もいれば、後輩のように「めんどくさいし面白くないし」という人もいるSNS、ミ●シィ。
好みの問題だ、というのは簡単ですが、その「好み」って何なのさ?というところが気になるのです。で、上記の記事を読んでみたのですが、なんとなーく感じていたところを言い当てられた気分。私自身は浅すぎるユーザーにすぎないので、某SNSに対して特に悪い感情を持っているわけではないのですが、それでも上記に言われているような「閉鎖性」は感じます。
巷で言われている「暗黙のルール」も怖すぎますしね(でもそれを強制してくるようなオトモダチは居ないので安心なんですけど)。
足跡機能も始めは驚きました・・・別に、誰が何時に見てくれてようが知らなくてもいいし。この機能の必要性って何なの?と思ったものですが、それこそがミ●シィになくてはならないツールだったそうですね。うーん、存じませんでした。
紹介制(会員制)というのも、昔はともかくここまで巨大になってしまったからにはもう会員制である意味もなくなりつつあるような・・・出会い系紛いもいっぱいあるみたいですし。

もっとも他のSNSを知っているわけではないので、他と比べようもないのですけれどね。他も似たようなものなのでしょうか?
「閉鎖性」が息苦しい人もいれば心地よい人もいるでしょう。私は基本的に閉じてる方なのですが、ネットでくらいはオープンに気軽にいきたいものだけどな。

あ、リンク先の記事は要約すると「女の子社会だから」と纏めています。
言いえて妙・・・・だと、思います。
2007-07-26-Thu-18-09

ハルさん

ハルさん/藤野恵美/東京創元社ミステリ・フロンティア

人形作家である春日部晴彦、通称<ハルさん>は、若くして愛妻に先立たれ、一人娘の風里、通称<ふうちゃん>との二人暮らし。
人生をかけて貫く仕事だと誓った人形作りと子育ての二束の草鞋に、要領のよくないハルさんはいっぱいいっぱい。それでも愛娘のふうちゃんはのびのびと良い子に成長し、今や自らが決めた相手と結ばれようとしている。
そう、ハルさんは今日「花嫁の父」になるのだ。
そんなハルさんの胸の内を去来する様々な思い出。不思議な出来事に遭遇して困った時、焦った時、ハルさんを励ましてくれたのはいつも亡き妻・瑠璃子さんだった。

という、いわゆる日常系のほのぼのミステリです。
<ふうちゃん>が幼稚園児のころに始まり、小学生、中学生、高校生、大学生・・・・と、時代時代の「ちょっと不思議なミステリー」が、ハルさんによって語られます。
ただただ幼く愛らしかった<ふうちゃん>の成長ぶりをハルさんとともに感慨深く読み解くもよし、または卵焼きすら満足でなかったハルさんの料理の上達ぶりに感心しながら読み解くもよし。
ほっこりした気持ちになる短編連作集です。
北村薫による母子家庭物語『月の砂漠をさばさばと』を連想しましたが、「在宅ワークの父と一人娘」からは『Papa told me』(榛野なな恵)を連想し、「頼りない親が亡き伴侶からサポートされて成長していく」ことからは『ささらさや』(加納朋子)を連想しました。

とりあえず、その辺の作品が好きな方は読んでみて損はしないと思います。
淡々とほのぼのした話なのですが、油断していたらうっかり最後は泣きそうになりました。花嫁の父って、嬉しく哀しいものですね。

ちなみに表紙イラストは、幼稚園児時代の「探偵さん」コスプレをしている<ふうちゃん>と<ハルさん>です。これまた可愛い。

ハルさん ハルさん
藤野 恵美 (2007/02/28)
東京創元社

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2007-07-25-Wed-23-40

吾輩はシャーロック・ホームズである

吾輩はシャーロック・ホームズである/柳広司/小学館

20世紀初頭、イギリスはロンドン・ベーカー街221Bに暮らすワトソン博士の元を訪れた奇妙な依頼人。どこをどう見ても東洋人男性である彼は、あろうことか「ワトソン君、僕だよ、シャーロック・ホームズだ!」と名乗り、今はよんどころない事情により日本人留学生に変装しているのだという。
あっけにとられるワトソンの耳に、彼をつれてきた下宿の女主人が囁いた。「ナツメさんは心神喪失状態で、かわいそうに、今はご自分のことをホームズだと思い込んでいるようなのです」。
そして巻き込まれた不可思議な殺人事件と倫敦塔の幽霊騒動。シャーロック・ナツメ・ホームズの珍推理は吉と出るか凶と出るか?

歴史上の人物をモチーフにしたミステリを多く発表している柳広司のユニーク・ミステリ。ちなみにナツメさんはホームズ妄想に取り付かれる前は、自分のことを名無しの猫だと言っていたそうです。
夏目漱石のロンドン留学時代がホームズの活躍した時代と同じことから、二人を絡ませた小説は他にも読んだことがあります。島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』は面白かったなぁ・・・と思いつつ本書を読んだのですが、こちらは主にワトソン君とナツメ・ホームズがメインで、本家本元のホームズ氏はスコットランドに出張中、という設定でした。

実はシャーロック・ホームズにそれほど思い入れのない私。
子供の頃にいくつか読んだはずなのですが、覚えているのは『まだらの紐』くらい。そして夏目漱石も、子供の頃に『坊ちゃん』を読んだような気がするのと、高校の教科書で『こころ』を読んだくらいという浅はかぶり・・・。
ホームズファンや漱石ファンの人なら、細かく散りばめられた小ネタにニヤリとしつつ読むことができるんだろうなぁ、と思いつつも、上記のような状態の私としては「ミステリとしてはまあまあ?」という感想でした。

うーん、やはり古典は読まねば勿体ないですね・・・。

吾輩はシャーロック・ホームズである 吾輩はシャーロック・ホームズである
柳 広司 (2005/11)
小学館

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2007-07-23-Mon-22-35

グレラガ 新章突入

久しぶりにアニメの感想です。

春先にいろいろアニメ初回の感想を書きましたが、結局今も見てるのは『地球へ・・・』『ぼくらの』、そして『天元突破グレンラガン』の三つのみ。中でもいろいろ裏切ってくれるのがグレラガですね。見てる中では唯一のオリジナルアニメだし、何よりGAINAXだし。

そして先々週から先週にかけては怒涛の 螺旋王編完結→総集片→新章初回 だったのですが、グレンラガンの何が面白いって、構成が上手いなぁというのが一番ですね。

初めの頃(カミナ編)は王道の少年冒険アニメを踏襲しているようで、「いかにも」だけど見せ方が上手いなぁ・・・という感想でした。
第二期ステージ(螺旋王編)では少年の成長・ボーイミーツガールがテーマでしたが、カリスマがいなくなった後の組織が描かれ、少年アニメの王道をはずして見せましたね。視聴者を裏切る展開は荒っぽいんだけど不思議と自然。

そして昨日の新章(7年後)突入ですが、いきなり「闇の世界を支配していたラスボスを倒した後、新時代を築く主人公たち」という、エンディングの後のエピローグ、ラブストーリーで言うなら「幸せな結婚へゴールインした後の恋人たち」を描くというようなもので、これもまた驚愕しました。アニメ史にない展開じゃないですか?前回まで一緒に戦う<戦友>だったキャラクターたちが専門分野ごとに別れて新政府を立ち上げており、その色にそぐわないものは自ら野に降りて・・・というのも「子供向け」ではない印象です。仲間だったはずのキャラクター間に齟齬が目立ち、新章はぐっと「大人向けSFアニメ」になったというかんじですね。主人公たちも大人になったし・・・・

あと今回驚いたのは、「そろそろOPも差し替えかな?」という時期でまさに差し替えだったのですが、それが「同一曲の2番」だったということです。相変わらず中川翔子の「空色デイズ」だったのですが、これがまたグレンラガンのストーリーにとてもよく合っている歌詞で(アニメあわせの作詞なのか)、カミナの面影もありつつ・・・なかんじがとても好きです。こういうのもアリですねえ。

後はこのまま一気にクライマックスへ突入でしょうか。GAINAXだからどんな荒業を出してくるのかな?というのもありますが、ここまでの展開からするといい意味で裏切ってくれそうなので、ハッピーエンドだと信じています。
これは新たな冒険アニメの定番になりそうですね。
王道を踏まえつつ斬新な手法を見せてくれるGAINAXは、やっぱり存在感が違いますです。
2007-07-18-Wed-21-14

金春屋ゴメス

金春屋ゴメス/西條奈加/新潮社

近未来の日本。
月移住がそう珍しいものではなくなった時代、一方で前近代的な生活に魅力を感じる人々が一部で増加し、中でも時代趣味が高じた資産家が財産をつぎ込んで日本国内に「江戸」を再現した。
擬似「江戸」内には老後の田舎暮らしに憧れる老人からロハスな生活を求める若者が集まり、着々とその規模を拡大していった。
やがて都市としての体裁を保つほどになると江戸は独立を宣言、日本政府もそれを認め、ここに創設者を将軍とした鎖国都市「江戸」が誕生することとなる。

・・・なんて、この設定だけでも愉快な本作は第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品。「うぬ、さすがは日本ファンタジーノベルだわい」と思ってしまうユニークさと素直なオモシロさで、一気に読んでしまいました。
「やったもんがち」な設定とはいえ、細部も至るまでなかなかの徹底しぶり。
海外においては「日本の属領」扱いとはいえ、日本に対しては列記とした独立国として独自の文化・生活スタイルを主張する「江戸」。
まず江戸に入国するには何百倍もの倍率の抽選を潜り抜けなくてはならず、入国に当たっては電化製品は勿論自然素材以外の(つまり江戸文化に適さないもの)は全て持込不可。鎖国状態を保つため外国人が認められる入国は生涯一度きり。食物は完全自給自足、生活用品・工業製品・医学薬品に至るまで輸入不可。ちなみに入出国を取り仕切るのは「長崎奉行」!

もうこの導入部だけで時代劇好きはやられちゃいます。
あとはもう好きにしてください、と、いかにもな時代劇調の物語に身を任せるのみ。「最初はそんなつもりじゃなかったのに」、気がつけばすっかり「江戸っ子口調」になってた主人公・辰次郎と一緒に「お江戸」気分を満喫するしかないってもんでしょ。

賑やかドタバタ、ホロリとくる人情劇にチャンチャンバラバラは外せません。おまけにちょっとホロ苦だったり。花のお江戸の大岡裁判を楽しみましょう。
翌年に続編も刊行されており、結構評判だったことがうかがえます。続編も読んでみたいです。

金春屋ゴメス 金春屋ゴメス
西條 奈加 (2005/11)
新潮社

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2007-07-16-Mon-20-20

グラスホッパー

グラスホッパー/伊坂幸太郎/角川文庫

非道な事故により妻を亡くした男・鈴木。
自分の妻を殺した男に復讐をするため、非合法な組織に潜入する。

女子供の殺害に躊躇がなく、一家皆殺しを多く請け負う殺し屋・蝉。
何の感慨もなく仕事をこなすが、ある映画を見て以来自分が操り人形のような意識に囚われる。

依頼人が指名した人間を必ず自殺に追い込む殺し屋・鯨。
『罪と罰』を読み返し続け、自らも自分が手にかけた人々の亡霊に襲われる。

物語はこの3人の視点から交互に語られる。
鈴木の目的は達成されるのか、蝉は己の「人形」のイメージから開放されるのか、鯨は襲い来る亡霊の数々を振り払うことができるのか。
そして全ての鍵を握る「押し屋」の正体は。

技巧的なミステリと青春小説のさわやかさ・ヒューマンさを併せ持った作風が人気の伊坂幸太郎の異色作。
「ちょっと雰囲気違うよ」と友人に聞かされていた通り、今までの中ではかなり重い雰囲気です。いつになく被害者も多いし(殺し屋が主人公なのだから当たり前か)、殺伐とした雰囲気が漂います。
裏表紙には「分類不能」とありますが、文庫解説では「ハードボイルド」だそう。私は・・・どうかな、でも単なる「ミステリ」ではないと思います、確かに。それだけでも伊坂作品としては異色でしょう。

全編を覆うブラックさに、明るい伊坂作品ファンからは敬遠されることも多いという本作ですが、私はそれほど重すぎるとも思いませんでした。こっそり他作品とリンクさせているのも、妙に引用文や警句が多いのも、張り巡らした複線をきちんと消化してくれるのもいつもの伊坂節ですし、最後には希望もみえるし。
ただいつもの作品よりは特に語るべき感想がないのですよね、不思議なことに。あ、蝉と岩西の微妙な仲間関係は好きだったかも。

今回は本編よりも解説のほうが面白かったです。
「デビュー以来、伊坂は「悪人らしい悪人」を描いてきた」ですって。
うーん確かに。そのさわやかな作風で忘れがちですが、伊坂作品って結構容赦のない暴力で死人が出てますよね・・・
あと「こうした具合にそれぞれの個性が際立っているため、一見して『グラスホッパー』はキャラクター主導の小説であるかのような印象を受ける。もちろんそれは間違いではない。」この後解説は、その地盤として冷徹なまでの客観描写があり、それこそがハードボイルドであるのだ・・・と続くのですが、これも納得しました。
キャラクター小説になりそうでなってないんですよね。物語という大前提の上にキャラクターがたっているのであって、決してキャラクターありきではない。伊坂作品には魅力的なキャラクターが沢山登場するのですが、立ちすぎたキャラが物語の流れを邪魔する作品が目に付く中で(特に何とは申しません)、とてもバランスのいい「立ち方」をしているなぁと思うのであります。

グラスホッパー グラスホッパー
伊坂 幸太郎 (2004/07/31)
角川書店

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2007-07-13-Fri-20-25

水に描かれた館

水に描かれた館/佐々木丸美/創元推理文庫

最近読了した『崖の館』の続編。
続編だ、三部作で完結だ・・・という話は知っていたのですが、ここまで前作を引きずった話だとは思っていませんでした。

仲の良い3人の従姉妹たちが死んでから数ヶ月。
3人の死は事故ということで発表されたのだけれども、その不自然さは隠しようがなく、資産家である伯母は世間からの心無い風評に晒されていた。事件が終わってから数ヵ月後、再び涼子とその従兄弟たちが館に集まったのは、その伯母の遺産目録作成のためだった。
遺産鑑定のために集められた鑑定士は4人、しかし実際に館にやってきたのは5人。
謎の1人は誰なのか?
同じ夜に浜辺で倒れていた少女。
聖書を抱え、神の声を聞いたという少女の正体は?
日に日に神経質になっていく鑑定士。
彼をそこまで追い詰めたのは誰か?

3人の従姉妹が死んだ館で再び起こる怪事件の数々。
佐々木丸美「館」三部作の中巻。

ということで、『崖の館』の続編です。
前巻で特徴的だった美文調はさらにエスカレートし、美文というよりはむしろポエムの域に達している感すらあります。『崖の館』は大丈夫だったのですが、今回は読んでいる途中に幾たび突っ込みたくなったことか・・・これは駄目な人は本当に駄目でしょう。

あと気になったのは死者の扱い。
どうにも「軽い」気がするんですよね。従姉妹の死については涼子が亡霊を見かけたりするなどして、はっきりと「死んだ」という認識に至ってないから・・・というふうに考えることもできますが、今回唯一の犠牲者となる人に関しては最後まで道化扱いだったりして。人が一人死んでいるのに、登場人物の間には大した精神的影響も何もない。ちょっとひどいんじゃないのかなぁ、と思ってしまいます。

それから主人公・涼子ですね。
全編が涼子目線なので、涼子自身のグチャグチャした精神状態も辟易するものではありますが、従兄弟たちが涼子の内面・成長を認めようとせず、いつまでも子供扱いで、彼女のことについて知ったように話し合う(そんな従兄弟たちも20代なのに)ところが勘に触りました。そしてそんな彼らからの扱いに甘んじている涼子自身も。なんだかなぁ、と思ってしまいます。

あとひとつ、ミステリとして。
これはもう「ええ・・・?」というかんじでした。ミステリとしてアリかナシかというと、私はナシだと思うんですが。宮部みゆき『魔術はささやく』で感じたありえなさを思い出しました・・・(でも『魔術』はいい話だったから別にそれでもかまわなかったんですけど)。

いろいろ辛い話でした。
あと一冊で完結だそうなのですが、読むかどうかは微妙なところです。
でも結局涼子は哲文なのかどうかは知りたい気がします・・・涼子、目を覚ませよ。

水に描かれた館 水に描かれた館
佐々木 丸美 (2007/02/28)
東京創元社

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2007-07-11-Wed-22-59

夏ドラ

夏のドラマ、いろいろ見てみました。
今回は漫画原作が多くて、期待半分不安半分・・・だったのですが、感想をざっと。

山おんな壁おんな
伊東美咲が演技力のなさ(失言?)をカバーするには漫画チックなキャラしかない、とは『電車男』から言われていたことで。今回もそれがいい方向に働きましたね。コンプレックスまみれの主人公でコメディというのは新規開拓かもしれません。天然深田恭子もあわせてコミカルなストーリーを単純に楽しめそうです。

花ざかりの君たちへ
掘北マキは思っていたより頑張っていたと思います。しかしいかんせん脚本がダラダラ・・・というか、まぁ設定や物語の筋が原作と違うのはかまわないのですが、それにしても納得のいく変更にしてほしいもの。漫画だから・・・とか、視聴者は若い子ターゲットだから・・・という理由で勢いだけの物語が許されるとは思ってほしくないものです。

牛に願いを
車のCMを先に見て、てっきり「動物のお医者さん」的な大学コメディかと思っていたのですが、予想に反したシリアスストーリーでした。スケコマシで優柔不断で内にこもりがちな玉鉄はいいかんじでしたけど、「田舎が嫌いなんだよ」という主人公ぶりには遺憾ながら共感できなくもなかったりして、見るのは辛いかもしれないです。作品としては真面目に作ってるなあと思いました。

山田太郎ものがたり
原作は純粋なコメディですが、ドラマ版はコメディ+家族愛ヒューマンストーリーを狙っているようですね。それだけにちょっとどっちつかずの雰囲気は否めません。泣けず、笑えずでした。キャストのミスマッチはもう今更です・・・これなら華流版ドラマのほうがずっとコメディとして出来はよかったなあ・・・と。
ドラマあわせで原作連載復活というのは単純に嬉しい出来事ですけどね。それだけでもう万歳です。

ホタルノヒカリ
思っていたより綾瀬はるかが頑張ってます。若&可愛すぎる点はもちろん感じますが、ね。干物バージョンのはっちゃけ具合が物足りないのも事務所的に仕方のないことでしょう・・・が、正直せめて前髪全アップ!くらいはやってほしかったです。
上司の藤木直人も想像以上の頑張りですが、やっぱちょっと若すぎませんかね。逆にマコト君が想像と違ったのですが(もっと可愛い子かと)、武田真治が可愛かったのでそれでOK!です。テンポもよかったし、これは全体的にはいい出来じゃないですかね。
2007-07-10-Tue-19-02

夕映え少女

夕映え少女/川端康成/新風舎文庫

たんに年若い少女が登場する・・・というだけではなく、少女たちの多感な心理描写に定評があり、その筋では少女小説の大家としての評価も高い、かの文豪・川端康成の少女小説ばかりを集めた短編集。
収録作品は

むすめごころ
イタリアの歌
童謡
金塊
浅草の姉妹
夕映え少女
正月三ヶ日

私としては『むすめごころ』が一番10代から20代はじめにかけての女の子の(恐らく自分でも理解しかねているだろう)内面を感じることが出来ました。そしてそんなヒロインの心理にちょっと共感もできたり。また語り手(手紙の書き手)である咲子の想いが懇々と綴られている様は太宰治の『女生徒』を思い出させました。(あれもまさしく少女小説でありましたね)
あとロマンを感じたのは表題作でもある『夕映え少女』かな。タイトルも印象的だし、映像も浮かぶ美しさです。
中には少々?な話もありましたが(『イタリアの歌』とか、あと『童謡』もちょっと腑に落ちない・・)、全体を通してみると、なるほど「少女小説」であることよなあ!と思ってしまうリリカルさ、繊細さであります。
でも現役「少女」はこんな小説は多分あまり好まないだろうな。今となっては「少女」に夢を見たい人向け、もしくは「少女」たらんとする人向けなのかもしれません。
表紙は夕日をシンプルにデザイン化したもので、色も綺麗なサーモンピンクだし、こんな本をみつあみの清楚な少女が読んでいたら、思わず跡をつけてしまいたくなるくらい素敵なんですけどね。

夕映え少女 (新風舎文庫) 夕映え少女 (新風舎文庫)
川端 康成 (2006/06)
新風舎

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2007-07-08-Sun-20-29

まんがキッチン

まんがキッチン/福田里香/アスペクト

一部では少女まんが好きとしても有名なお菓子研究家・福田里香が、自分が愛してやまない少女まんがをテーマにした創作お菓子本。
とはいえこれはもはや「少女まんがをテーマにしたお菓子本」ではなく「少女まんがを語るついでにお菓子が出来ちゃいました本」といったほうがいいのでは、と思ったくらいの内容です。

だって取り上げる作品が、

『ハチミツとクローバー』
『のだめカンタービレ』
『ベルサイユのばら』
『トーマの心臓』

くらいなら、まぁ「そうだね、少女まんがの代表作だもんね」と思えます。でもそれが

『笑うミカエル』
『エマ』
『西洋骨董洋菓子店』
『百鬼夜行抄』

とくると、ちょっとディープな漫画好きっぽい。
これだけでも「やるな、おぬし」という気になりますが、さらに

『棒がいっぽん』
『コダマの谷』
『時をかける少女』(劇場アニメ版)

ときた日にゃあ「うわあマニアック」だと思います、私ですら。

漫画の中に登場する食べ物(特にお菓子)からストーリーの要点を読み解くというのは専門家の福田さんならではのユニークな視点ですが、それがちゃんと的確に響くのは重度の漫画好きである福田さんならでは。
個人的には『Papa told me』と『じゃりん子チエ』は紙一重だ、とか、少女まんが的世界においてシチューとココアは食べ物として別格である、等の読み方が面白かったです。
そんな福田さんのオリジナリティ溢れるコラムだけでも面白いのですが、本書にはさらに漫画家さんとの対談も収録されています。その相手がまた豪華の一言で、

羽海野チカ
くらもちふさこ
よしながふみ
萩尾望都

という面々。これがまた読み応えたっぷりです。
少女まんが好き、いやちょっとディープな少女まんが好きの人には是非読んでいただきたい一冊。
しかしこれはくれぐれも「お菓子本」ではなく「まんが解説本」の扱いにしていただきたいな、そうでないと本来の読者層とかけ離れたところにいってしまうよ、と、そんな心配をしてしまうほど。
「菓子作りになんて興味ないよ」っていう漫画好きの方にも読んでいただきたいなと思います。そうでないと勿体なさすぎなくらいのまっとうな漫画解説本ですもの。しかも愛情こもりまくりの。

まんがキッチン まんがキッチン
福田 里香 (2007/03/22)
アスペクト

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2007-07-06-Fri-18-41

文藝ガーリッシュ

文藝ガーリッシュ/千野帽子/河出書房新社

かつて私は少年が好きでした。
この場合の少年というのは勿論(何が勿論だか)観念的な意味での<少年>です。線が細くて大人を信用してなくてガラスのハートを持つ美しい生き物・・・というイメージを夢に見ながら稲垣足穂『少年愛の美学』『A感覚とV感覚』をこっそり読んだり、長野まゆみを堂々と読んだりしていたのは高校時代。
その後何故だか興味の方向が「少女」へと変換されました。元々少女趣味の気はあったのですが、今じゃ本棚には高原英里『少女領域』『ゴシック・ハート』が鎮座して、澁澤龍彦の『少女コレクション序説』はちょっと違う?でも尾崎翠『第七官界彷徨』はばっちり並んでいます。

そして出会うべくして出会ったのがこの『文藝ガーリッシュ』。
筆者が選びに選んだ「志は高く心は狭い文化系小娘(フィエット)のための」ブックレビューです。

そうコレブックレビューなんです(多分一応)。
私はてっきり『少女領域』っぽい分析本の類かと思っていたので、最初こそ「あれれ」と思ったのですが、いやはや本の紹介文の隙間からビシバシと放たれる小気味のいい「文藝乙女考察」にはニヤリとさせられっぱなしです。
しかしこの本の読者層って相当ピンポイント。可愛らしい表紙に惹かれて読んでみたお嬢さんが「何いってるのか全然わかんない」ということも大いにありえそうです。
だってこれは始めから読み手を選ぶ本ですから、「選ばれなかったから」って文句を言うのは筋違い。だからほら、サブタイトルは『素敵な本に選ばれたくて』。
「あなた」が「本」を選ぶのではなくて、「本」が「あなた」を選ぶかどうか、というところが大きな問題。最初から喧嘩腰なんですのよ。

ちなみに私は(わざわざ購入したくらいなので)面白く読むことが出来ました。いろいろ興味深いです。知らない作家が多かったので、未知の本について知るのが面白いのは勿論だけども、どちらかというと筆者の炸裂する主義主張のほうが面白かったです。

 かつてオタクは博覧強記の「精神の貴族」でした。
 もちろん今では教養・知識がなくとも二次元キャラに萌えることが
 できればオタクを名乗れるという風潮があります。そういう偏差値
 の低いオタクの蔑称として「ヌルヲタ」という語があり、
 

「ヌルヲタ」って漠然と聞いたことはあったのですが、なるほどそういう意味だったのですね。言いえて妙です。
ガンダムもSEED以降しかはっきりとは知らず、サンライズの90年代黄金期も知らず、エヴァに至るまでのGAINAXの歴史どころかエヴァすらちゃんと見ていない!くせに「ボクってオタクなんですよね・・・(何故か偉そう)」なんて発言する職場の後輩君にイラつくのを抑えられなかったのは、私が

 「哲学」「アート」「ロック」「ミステリ」「SF」、なんでもい
 いのですが、教養派は歴史的連続性のある(ように見える)ものが
 大好きです。そのジャンルの本質、イデアというか理想の型のよう
 なものを心に抱く、永遠の少年たちとでもいいましょうか。
 


というように、系譜的なものを重んじる傾向にあるオタク要素を持っているからなのでしょうか。「オタクは語りたがり」とはよく言われますが、それってつまり「説明したがり、解説・分析したがり」ってことで、それには上記のような傾向が強いからかもなあ、と思わされます。その点ではアニヲタだろうが鉄道ヲタだろうが音楽ヲタだろうが違いないかもしれません、確かに。

なんて、少女でもなんでもなくてオタク分析になっちゃってますが・・・まあ、似たようなもんだし。というのは暴言でしょうか?でも筆者本人が

 かつて私は、女子が、「私が可愛いものを好むのは、私が可愛く
 ないからだ」と小声で言うのを聞きました。この自意識こそ乙女
 の第一歩。いっそ漢(おとこ)と呼んでもいい。同じことです。


って言ってるくらいだしね。
自分の信念をもってわが道を進むのに乙女も少年も漢もないってことでしょう。孤高を恐れず、精神の貴族たれよ。

文藝ガーリッシュ    素敵な本に選ばれたくて。 文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。
千野 帽子 (2006/10/17)
河出書房新社

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ところで堀辰雄『聖家族』の中に、芥川龍之介をモデルにした九鬼という人物が登場するそうです・・・・おお、『蕭々館日録』(久世光彦)!なるほどこういう下敷きもあった上での『蕭々館』だったんですね、さすがは久世先生。これを知っただけでもこの本を読んだ甲斐がありました。
2007-07-03-Tue-22-35

amato amaro

amato amaro アマート・アマーロ/basso/茜新社

ついに出ました!bassoの新刊!
いやあ衝撃の『クマとインテリ』との出会いからはや1年・・2年?オノナツメ名義の単行本が次々と刊行される中、私が待っていたのはbassoの新刊だったわけで・・・いやもう単純に嬉しいです。

さて、タイトルが『クマとインテリ』ではないように、これは単体でも問題なく読める短編集になっていますが、帯が主張しているように『クマとインテリ』の登場人物も引き続き登場したりして、やはり位置づけ的には続編といっていいでしょう。

舞台はイタリア。
ゆえに登場人物のほとんどがイタリア人、付け加えて成人男性。
スーツ、眼鏡着用率高し。
ついでに平均年齢も高い。
画面は白黒調で線は太く、「ざっくり」とした質感の絵柄。
交わす言葉は少なく、沈黙がより饒舌に感情を語る。

キレイキレイな絵が好き、いわゆる<BL>が好き!という人には向いていないかもしれないこれも、でもまあジャンル的にはBLになるのでしょう。大人のためのBLというかんじかな?と思いますが、何故か某大型書店では男性向け新刊のところにも平積みされていました。恐らくよほど『クマとインテリ』が売れたのであろう、と思われます。(それにしてもなあ・・・)
オノナツメのブレイク前からチェックを入れてた身としては一抹の寂しさも覚えますが、まあ売れているのはいいことです。
ちょっと気になったのは奥付なのですが、各話の掲載時期が2005年~2007年なんですよね。つまり1年に3本くらいしか書いてないんですよ。だとすると、うわあ、次に新刊が出るのはひょっとしなくても再来年・・・?
漫画家業の中心はやはりオノナツメなのだろうし、そちらはそちらで連載も抱えた売れっ子なので、ますますbasso稼業はペースダウンするのかもしれない、なんて思うとちょっと複雑でもあります・・・でもまあオノナツメも好きですが。
贅沢な悩みではありますね。

ああ私もマルチェッロのジェラートが食べたいなあ。
というか、ジェラート屋に日参するいい男たちを見たいものです。
でも今回の一番のお気に入りは『カッラーロの秘書』かな。
カッラーロ兄弟も可愛いです。
教授とジーノの大人気ない仲直りも悶絶する愛らしさだし。
イタリアに行きたくなって、困ります。
うーん、罪。

amato amaro amato amaro
basso (2007/06/29)
茜新社

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2007-07-02-Mon-21-39

群青学舎 二巻

群青学舎 二巻/入江亜季/ビームコミックス

このところ次々と好きな作家さんの漫画が発売されて、嬉しい限り。
『群青学舎』の続きがこんなに早く出るなんて!書店での出会いは全く不意打ちで、喜びと驚きに小躍りしそうでした。

『群青学舎』というシリーズ名になっていますが、内容は全くの短編集。ジャンルも学園モノから王道ファンタジーまで色とりどり。ですが2巻に関しては大河ファンタジー『北の十剣』が半分以上を占めていて、やはりこの作品について語らないわけにはいかないでしょう。
「北の十剣」王国の王座をめぐる王族同士の骨肉の争い劇。生まれながらに女王たる風格を持つ亡き国王の愛娘・グゼニアと、玉座の簒奪者である弟王の一人息子・ルーサーの二人を中心とした大河ロマンスでもあるのですが、これがね、もう、上手い上手い。

物語の内容からしたら到底1冊に収まる分量ではないものを無理やり短く仕上げたその手法は、「おいしいトコどり」なダイジェスト版とでもいったらいいか・・・・これ、やりようによったらベルばら並の長編大河ロマンスになったと思うんですけどね。それをあえて手短に纏めたところがもったいないな、とも思うけど、だからこそのスピード感でもあったなあと思ったり。
各話の間が結構飛んでいたりする(単行本書き下ろしの後日談漫画でいくらか補填されてるけど)ところは「読み手の想像力で補え」か?というところが反則だなあ、ちょっとズルいなあ、とも思うけれど、でも上手いんだからもう文句は言えないです。

上手いなあと思います。
何が上手いって話ももちろんだけど、それに加えて絵が上手い。
もはや花の24年組みたいな風格すら感じます・・・入江さんて、いくつくらいなんでしょう・・・


群青学舎 2巻 (2) 群青学舎 2巻 (2)
入江 亜季 (2007/06/25)
エンターブレイン

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2007-07-01-Sun-22-08

ゆっくりさよならをとなえる

ゆっくりさよならをとなえる/川上弘美/新潮文庫

人気作家・川上弘美のエッセイ集。いろんな雑誌や新聞に掲載されたものをまとめたもので、ともすれば散漫な印象になるかと思いきや、どれもが川上ワールドの文章になっていて、読み心地はひとえにまったり、じんわり。
各文もとても短くて、寝る前にちらりと読んだりするのにぴったりです。一気読みするのはちょっともったいないくらい。

と、褒めてみましたが、実は川上弘美にはそれほど思い入れがありませんでした。一応代表作(というか、まあ“売れた”作品)であるところの『センセイの鞄』と『ニシノユキヒコの恋と冒険』の2作は読んでいるのですが、『ニシノ~』は確かダヴィンチのプラチナ本に選ばれていたくらいだのに私にはその良さがしっくりこなかったし、『センセイの鞄』はそれよりはずっと好きな雰囲気でしたが、いかんせん私には大人っぽすぎたというか・・・どちらかというと「キョンキョンが演じたというドラマ版を見てみたいものだ」という方向に意識がいってしまって。(だって演出が久世先生です!)
しかしこれはどちらも「すごくいい」という前評判を聞きすぎていたためじゃなかったと思うのです。だって、何の気なしに読んでみたこのエッセイ集は声を大にして「とても好き!」といえる一冊だったから。

「なべてこの世のものは、可笑しい」とか
「ムツカシイなりにいいもんだという気分になっていた」とか。

ユーモアの中にペーソスがあるというか(ちょっと格好つけて言ってみました)、シニカルなようでのほほんというか(でもこちらのほうが当たっているかな)。
そういう文章が、個性が、とても好きになりました。
「ああ、川上弘美ってこういう人だったんだ!」と、初めて魅力を知ったかんじです。3冊目にして、情けない話ですが。
食べることと読むことがこの上ない喜びだという作者のライフスタイルも勿論身近に感じますし、可愛らしい顔立ちだなぁと思っていた作者が実は「大女」であることにやりきれなさを感じていたり、というところにもなんだか親しみやすさを感じます。
簡潔なのに柔らかに美しく響く日本語も好きですし。

いや、良かったです。もうちょっと他の本も読んでみたいという気になりました。次は何が良いでしょうか・・・。

ゆっくりさよならをとなえる ゆっくりさよならをとなえる
川上 弘美 (2001/11/24)
新潮社

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