フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2007-01-25-Thu-21-45

アラビアの夜の種族

アラビアの夜の種族/古川日出男/角川書店

刊行当時、話題に話題をよんだ第23回日本SF大賞受賞、第55回日本推理作家協会賞受賞作品。
ずっと気にはなっていたのですが、その分厚さにしり込みする事はや幾たび・・・今更ながら読了しました。いやいや面白かったです。

舞台はナポレオンがエジプト侵攻を企む時代のカイロ。
迫りくるフランク艦隊に対抗する唯一の手段として考案されたのが、読む者を破滅に導くという『災厄の書』の作成。
それは遥か昔から伝わる伝説の書。
あまりの魅力、悪魔的な物語の魔力によって読むものを恍惚へと導き、心神喪失状態に陥れるのだという。
それをナポレオンの手元へ届けるため、夜毎行われる「物語り」。
夜の種族の語り部ズームルッド、エジプト一の書家とその従者、そしてこの企みの首謀者・美しきマムルーク(奴隷騎士)アイユーブ。この4人によって『災厄の書』はしたためられる。

というのが、まず第1の軸。
そして第2の軸が本書の8~9割の分量を占めている『災厄の書』の本編・・・語り部ズームルッドが語る「伝説の物語」です。
この1と2が交互にやってくる入れ子構造になってるんですね。私的には、もう圧倒的に『災厄の書』パートの方が面白かったです。
『災厄の書』には主人公が3人登場します。
蛇の邪神と契りを結ぶ異形の魔術師アーダム、
森の一族に育てられた無色(アルピノ)の捨て子ファラー、
生み捨てられた麗しの王子サフィアーン。
この3人がそれぞれの人生を歩み、対面し、そしてつむがれる物語・・・魔法あり、剣戟あり、美しいお姫様に王子様、おまけに悪の魔法使い。これぞ「物語」、これぞ「おとぎばなし」!ってかんじです。
こちらパートのキャラたちだけを見れば、そのままラノベに流用出来そうなくらいのテンションで、出だしの歴史小説っぽい部分で引いちゃった方には、いっそこちらから読み出すことをオススメしたいくらい。

物語はやたらと流麗で装飾的な美文調で語られるかと思いきや、妙なところで現代語っぽい口調(スラングっぽい?)でキャラが喋りだしたり。
人によってはこれが気になるかな?というところですが、私的にはそれがいい意味でアクセントになって、リズムを生んでくれたかんじですね。この流れに乗ってしまえば、結構サラサラ読めると思いますよ。私は第2部以降ぐっと読みやすくなりました。やっぱり物語の主人公は美しくなくては!

個人的なお気に入りは、もちろんサフィアーン。
白い美貌のファラーとの掛け合い部分が楽しかったです(笑)
この二人の対面シーン、どこかで読んだような・・・と思ったらアレですよ、魔界都市新宿のドクターとせんべい屋さんのノリでした。(作中の地下迷宮も「新宿」っぽいし)こんなこと思ったのは私だけでしょうか・・・このコンビがもっと見たかったなーと、しみじみ。
ちなみに妄想キャストはサフィアーン=O・ブルーム。どうでしょうか、これ。天然王子。

さて、「推理作家協会賞受賞」というだけに、最後にオチが用意されているのですが・・・それは別に「ふぅん、そうきたか」ってくらいのもんでしたね。正直、ちょっとあっけなかったような気が。
あとは「SF大賞」なのですが、これは自分が「SF」に疎いもので、どの辺がどう「SF」なんだか分かりませんでした。きっとSFの定義って私が思っているよりはるかに大きいものなんだろうなぁ・・・

個人的には「幻想歴史ファンタジー」かな?という印象ですが、ジャンルは何にせよ、とても楽しい「おとぎばなし」でした。
この分厚さに挑戦するだけのことはあると思いますよ。
文庫も出たみたいですしね。
それにしても作者さんは自身の物語を「面白すぎて読み止められない話」なのだと自分で言ってるのだから、まぁずいぶんな自信ですよね。それだけ気合入れた本だったのでしょう。
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2007-01-20-Sat-21-42

マルドゥック・スクランブル  圧縮

マルドゥック・スクランブル TheFirstCompression 圧縮/冲方丁/ハヤカワ文庫

近未来都市マルドゥック市が舞台。
15歳の少女バロットは高級娼婦として生活していたが、ある日愛人であるはずのシェルの手により車とともに爆発に巻き込まれる。
死に至るはずの彼女を救ったのは「マルドゥック・スクランブル-09」。本来法律で禁止されているはずの科学技術が人命保護に限り許可される特別法令。そして実際にバロットの体を死の淵から助けたのは「09」事件担当官のドクターとネズミ形万能兵器ウフコックだった。
そして目覚めるバロットの特殊能力。
何者にも変形可能な万能兵器ウフコックに対する適応能力が並外れて高かったのだ。ウフコックそのものであるボディスーツに身を包み、ウフコックそのものである銃を乱射するバロット。シェルの犯罪を告発しようとする彼女に容赦なく迫る悪の手。
果たしてバロットは勝利することができるのか?

という、言ってしまえば美少女SFアクションなのですが。
男たちから「人形」と呼ばれ、弄ばれてきたバロットがウフコックとドクターに段々心を開いていくさまは、男子ならずとも萌えです。かわいいかわいい。
それぞれトラウマがあるバロット・ウフコック・ドクターの擬似家族的なほのぼの感がいいですね。
ネズミと少女という組み合わせになんとなく「十二国」を連想したりしてしまいましたが、大きいネズミに「もふっ」とうずまるのもヨシ、小さいネズミを「ひょいっ」とつまむもヨシ、ああ、いいなぁ・・・

それほど目新しい設定ではなく、むしろありがちと言っていいくらいなのに、勢いがあって続きが気になります。ありがちというよりは王道といった方がいいのかもしれない。それは決して批判ではないのだからね。
SFアクションはアニメにするとより面白くなると思うので、脳内では村瀬修功キャラデザで上映しながら読んでました。平井久司やCLAMPは勘弁してください。
2007-01-16-Tue-21-39

奉教人の死

奉教人の死/芥川龍之介/新潮文庫

年始に実家で読む本がなくなり、だいぶ昔に古本で購入したまま放置していた本書を読んでみました。
「青空文庫」で『南京の基督』を読んでズガーン!と来た直後、芥川龍之介の切支丹モノということで買ってみた記憶があります。かれころ2年くらい前でしょうか・・・
残念なことに『南京の基督』は入っていなかったのですが、どれも割合に読みやすかったです。
ほんとに短い話ばかりで、最初こそ文字の小ささにしり込みしていたのですが(昔の文庫ってポイント小さいですよねえ)、読んでみると意外とあっさりと読めてしまいました。

収録作は

煙草と悪魔
さまよえる猶太人
奉教人の死
るしへる
きりしとほろ上人伝
黒衣聖母
神神の微笑
報恩記
おぎん
おしの
糸女覚え書

個人的に面白かったのは「さまよえる猶太人」「黒衣聖母」「神神の微笑」「報恩記」「おぎん」。
好みだったのは「るしへる」「黒衣聖母」「おしの」。

わりと人意地の悪い話とか好きなんですよね・・・
わりあいスルっと読めたので、また古本屋ででも他の本を買ってみようと思います。
ちなみに芥川好きの方は是非『蕭々館日録/久世光彦/中公文庫』を!
芥川龍之介がモデルの作家が登場するのですが、どうにもならないくらい格好いいのですよ。格好よすぎてジタバタします。
2007-01-12-Fri-21-33

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹/角川書店

毎度ながらお友達の透子さんにお借りしました。
大変インパクトのあるタイトルですが、桜庭一樹さん初読みでございます。

さて帯の文句が大変印象的なこの本。
『たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。
男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風』
って、ちょっと大見得切るにも程がある煽りじゃありません?さらに表紙は制服姿の愁いを帯びた美少女&美少年で、雰囲気たっぷり。
しかしてその内容は、・・・・思っていたより随分まっとうな青春小説でした。

ヒロインの母・優奈は25歳のある日、急に「男遊びをしたいな」と思った。それも「辻斬りのように」。
厳しい母に育てられた優奈は自分が「母によって理想の娘につくりあげられた、ただの『白っぽい丸』」のような存在なのだと認識していたのだ。25歳になるまでそれを変えられなかった。
それを変えるには?男遊び、男遊び、男遊び・・・・。

ヒロインの女子高生・七竈(ななかまど)はそうして生まれた。父は誰だかわからないが、母の優奈が平凡な容姿なのに比べて、際立った美貌の少女に育った。
年々磨きがかかる自身の美貌と世間に知られた母の所業とにより、世間の目を気にしながら生きる日々を送る七竈。
そんな七竈の唯一の理解者は幼馴染の少年・雪風。
雪風もまた美しすぎる容貌をもつ少年であり、それを疎ましく思う性質もまた七竈と似通っていた。
しかし二人の間に口には出せない疑問が生まれる。
二人はいつまでこのまま一緒にいられるのか?
旭川という狭い田舎町に生まれ育ち、息苦しい思いを抱えていたヒロインが故郷や母から解放されていく・・・。

生まれ育った狭い世界(それは故郷だったり、親により作られた自身のキャラクターだったり)からの脱出。
「不幸にも美しく生まれてしまった少年少女」というキャッチーな設定ですが、描かれていることはとても王道の青春の悩み、だと感じました。
逆にいえば王道すぎるテーマを「美少女&美少年」という味付けで食べやすくしてみました、というかんじでしょうか。
話は主に七竈を中心として進んでいきますが、母の優奈も幼馴染の雪風もまた作品のテーマを物語る人物であり、ともに「新たな世界(自分)」へと踏み出す人物です。

個人的には母の優奈にもヒロインの七竈にも共感できました。いや勿論私は男遊びをしたいとも思っていないし絶世の美貌でもないのですが、優奈の「母の影響下に育てられた無難な娘である自分を変えたい」という願望や、七竈の「狭くて息苦しい地元を出て、自分を知っている人が誰もいない所にいるということの解放感」は分かる気がするのです。とても。

私が地元を離れたのは大学進学時でしたが、なんだか妙にスッキリしましたね。別に寂しくもなかったし、それよりも「ゼロからのスタートである!」ということへのワクワクのほうが勝っていました。
全く知らない土地であり、知らない人ばかりである、ということへのあっけらかんとした気楽さ・・・というのは、初めての経験でしたし。
私は面倒臭いのでやりませんが、何回も転居する引越しが好きな人の心理というのもそういうものなのかも。自分の中でリセットできるというか・・・そういう。

ヒロインの出生の謎だとか母の男遊びによるややこしい事態なども絡まりあってるのですが、どうも私はこれを帯にあるような「最高の恋愛小説」とは思えませんでした。
むしろ「普遍的な青春小説」といえるかな、と。
七竈と雪風の絡みよりも、七竈と母の絡みの方が興味深かったし。あ、妙に浪漫チックな表現も私的には面白かったです。
なんだかんだいっても、久しぶりに一気読みした一冊でした。
2007-01-06-Sat-21-23

アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎/創元推理文庫

既刊の文庫落ちを待ち続けてる伊坂さん。
ようやくか!と思ったら、これも映画化なんですね。人気者だなぁ・・・

さて内容が読み取りにくいタイトルの本作は「現代の話」と「2年前の話」が交互に語られる二重構造になっています。
現代は、大学入学直後の主人公・椎名と、「一緒に本屋を襲撃しよう」と誘う謎の隣人で河崎と名乗る男との話。
2年前の話は、ペットショップ店員の琴美とボーイフレンドでブータン人のドルジ、そして琴美の元恋人・河崎の3人の話。

一見関係がないような二つの話が河崎の存在によって繋がっていきます。そして読む進むうちに主人公と共に気付くのは、これは2つの話が均等な比重で絡んでいるのではなく、2年前の物語こそがメインであり、現代はそのエピローグなのだということです。
それをあえて現代編を頭にもってきて、さらに二重構造にしてみせたところがやっぱり伊坂だな、というかんじ。

個人的には多分ミステリの最も核となる部分に、真ん中・・・いや、真ん中よりちょっと手前くらいのところで気付いてしまったのが「見破ったぜ」的満足でもあり「くうっ、最後まで騙されたかった!」という残念なところでもあり。(でもこれは意図的?わかりやすく書いてる?)
そして悪魔のように格好良い(笑)河崎のことが分かってから、琴美の身に起きることの察しがついてからは、段々読む手が重くなってしまい・・・あ、でもこれは決して悪い意味ではないですよ。むしろ琴美・ドルジ・河崎という3人組に対して愛着が生まれたからこそ辛くなってきたということで・・・
ちょうど大学生~20代くらいの若者を描かせたら、とても魅力的に描写してくれるんですよね、この人は。
なんだか皆キラキラしてるんです。青春なんです。

ミステリのオチは大体想像通りのものでしたが、もちろんたんに暗いだけの話では終わらせないのが伊坂節。タイトルにつながるエピソードも、ちょっとした明るさも示してくれて、うん、やっぱり面白くていい話でした。
帯に載っていた映画版キャストもとてもハマっていると思います。松田龍平は「なるほど!」というかんじ。公開は夏かぁ・・・ちょっと気になるかも。

ただ、私はこれをてっきり「貧乏学生が広辞苑ほしさに本屋泥棒を企む陽気なクライムノベル」だと思い込んでいて、本書の中身とのギャップになんだかとても驚いたのです・・・。
2007-01-05-Fri-21-21

となり町戦争

となり町戦争/三崎亜記/集英社文庫

映画前に早々文庫になってくれた本書。
『バスジャック』が結構ヒットだったので、期待しながら読みました。
さて、物語はタイトル通り日本国某所の「舞坂町」とその隣町である「森見町」との戦争を描いた物語です。
舞台は日本、時代は現代。だけど戦争。
その不条理な状況が「戦争という共同作業」との言葉でもって進行していきます。
主人公は舞坂町の1町民。突如始まった戦争に全くリアリティを感じられない彼の元にある日「偵察業務任命書」が届く。無作為に選ばれたとしか思えない事態だったが、彼は「これで自分も戦争を体感できるかもしれない」と思い、偵察業務に従事することを決意する。

しかしそれでも尚続く平穏な日常に「戦争」を感じることができない主人公。その一方で、すでに何人もの「戦死者」が出ているという事実。
この嫌な違和感が最後まで続きます。

「これは殺し合いではなく戦争という事業です」というお役所の言葉が妙に現実味があって不気味。
実際に戦争の一端を担っているにもかかわらず、どこか遠い国の内紛をTV越しに見ているかのような感慨しかもてない主人公はそのまま我々日本人像ということなのでしょう。
日本人にとって戦争はもはやフィクションでしかないのだ、ということをこういう手段で描いたのは「面白いなぁ」と思うと共に「ひねくれてるなぁ」とも。
作者さんはひょっとして役所勤めの方?と思ってしまうほどの事務的な描写、表現がとてもリアリティがあって(融通きかないのはウチの職場と一緒です)、そこが一層不気味で気持ち悪くて。
はじめから終わりまでずっとその違和感と不快さは続くのですが、でも、上手い、と思う。
この発想は「やったもん勝ち」かもしれないけれど、それをちゃんと読ませてくれたのは作者さんの力でしょう。
本当に不快なだけだったらさっさと読むの止めてますもん。

個人的には主人公と役所担当者香西さんの恋愛?部分が妙に浮いていたような・・・。

それにしても、これを映画にしようと思った人もすごいです。果たしてどんな出来になったのでしょう。とりあえず香西さん役の原田知世はぴったりだと思いますが・・・はてさて。


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