フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2006-12-31-Sun-11-54

小春日和

小春日和/野中柊/集英社文庫

年末年始の読み貯め用として買ったはずなのに、うっかり読んじゃいました。
最近好きなガールズ路線。児童文学・・・ではない、と思いますが、一般文芸かと言われると??です。小学校高学年~中・高生向けかな?とも感じますが、「大人が懐かしんで読む」本というのが正しいような。
古きよき少女漫画の世界です。

主人公は双子の女の子、小春と日和。
ごくごく平凡な双子であった姉妹の日常は、母の影響でダンスを習い始めたところから少しだけ変化をみせはじめる。
彼女たちのダンスを見た人から、CM出演のオーディションを受けてはどうかと勧められたのだ。
周囲の予想を裏切ってトントン拍子に話は進み、二人のCMは全国区の人気となった。突然変わった周囲の環境に戸惑う二人、子供の将来のことで言い争うことが多くなった両親、はじめて生まれる「相手(双子として)への違和感」・・・

ダンスは好き、きれいな服を着てCMに出るのもうれしい。
けれどそれと同時に感じるのは見知らぬ人から勝手にキャラクターとして見られてしまうことへの戸惑いと先の見えない将来への不安。

どうです、ちょっと昔の正統派少女漫画にありそうな設定じゃありませんか?
舞台もちょうど「ザ・ピーナッツ」が引退間際のころだし(70年代?)、文庫裏の「ノスタルジック・ストーリー」という言葉がしっくり馴染みます。

幼い少女の揺れる悩み・・・というのももちろんポイントではあるのでしょうが、個人的によかったのは「何かに夢中になることへの喜び」が伝わってきたこと。
体と心が離れていく。
足が別の生き物みたい。
二人だけで踊るとき、目を見るだけでお互いの思っていることが分かってしまう・・・。
生まれた時からインドア派の私でも、なぜか理解できるような気にさせてくれました。ほんとに楽しいんだろうな、体中が「それ」だけで染められるのって、というかんじです。
二人が映画館で初めてミュージカルを見るシーンも印象的でした。これは私にも実感できます、本当に夢中になって見聞きするときって、放心状態になっちゃうんですよね。トリップするというか、トランス状態というか・・・そういう。

そんなキラキラが伝わってくる文章なんです。
ともすれば甘ったるいだけのお話かもしれませんが、これは甘いだけじゃない、確かな心理表現も併せ持った「少女小説」なんだと、声を大にして言いたいですね。
あとは登場人物も魅力的~。
「近所のお爺さんに恋して毎日通い妻状態の祖母」や、
「そんな祖母をおおらかに受け入れる長沼さん」、
「どこか大人びた同級生・吉田俊樹」ははずせないし、
双子を夢中にさせた「桜井先生」はたんに格好よくてダンスが上手いだけじゃなく、二人を子ども扱いしない・・・というところもポイントですね。

これは双子の妹が過去を懐かしむという形式をとっているので、「これから先はどうなったの?」「え、ひょっとして・・・?」なんていろいろな想像をしてしまいます。そこがちょっと大人の味付けというところでしょうか。
かわいくて愛らしい作品です。
これは大人の女性に読んでほしい、と思いました。

ところで読み終わってから気づいたのですが、私、この人の本2冊目でした。以前読んだのは『ひな菊とペパーミント』。これも本当にかわいい話でした。
この人は、キャラが上手いんだなぁ・・・・

読了日:2006年12月22日
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2006-12-31-Sun-11-53

いつか王子駅で

いつか王子駅で/堀江敏幸/新潮文庫

翻訳家兼教師の主人公が、東京王子でのいろいろな人たちとの交流を描いた長編。
とても薄い本なのですが、なにしろ読むのに時間がかかりました。それはなにも「ストーリーが分かりにくい」とか「難しすぎてよく分からない」のじゃないのです。自分でも上手く言えないのですが、なぜか「眠気を誘う」本だったんですね、私にとっては。

ストーリーらしいストーリーはありません。
主人公が銭湯で出会う「正吉さん」。
珈琲を出す居酒屋「かおり」。
大家の「米倉さん」とその娘「咲ちゃん」。
王子に住む人々とのささいな交流と、それから派生して主人公の心に浮かぶ様々な事柄。書いてあるのはそれだけなのに、それだけのことが不思議と心地よくて、一気読みできない本でした。

主人公が思うことのひとつに、「手足の思考能力を大切に育ててきた人々」への敬意があります。
文筆業で生計をたてる主人公は、いわゆる「職人」の人に会い、彼ら自身の経験から語られる事柄に対して「素直に参ったと言いたく」なります。
実体験ではない書物から得た「知識」とは違う、彼ら自身の「知恵」に対する敬意(それは主人公の劣等感ともいえると思う)というのは、私自身にも身に覚えのあることで、共感してしまったり。

あとは文学ネタや競馬ネタがとても多いです。
そういうのに造詣のある方なら、もっと楽しく読めるのではないでしょうか?
全く知らない私でも「テンポイント」に関しては「へぇー」と思いながら興味深く読めました。知らないジャンルにもいろんな面白エピソードってあるもんなんですね。無知って勿体無いなぁと思わされました。

とはいえ、そんな競馬ネタ部分の大半は「ふぅん」程度に読んでいたのですが、それがラストであんなふうに繋がってくるとは・・・正直、この本で「盛り上がる」ことはなかろうと思っていたのに、ラストの「咲ちゃん」の疾走シーンはじぃんときてしまいました。

日常の積み重ねであり、文の大半は主人公が「思うこと」で、特にドラマチックな事件も涙するエピソードもない話だというのに、なぜか心地いい空気が流れる世界です。
エンタメ文学読みの仲間(私もですが)には薦めにくい本かもしれない。
面白いの?と聞かれて、率直に「面白かったよ!」とはいえないような気もするのですが、読んだ後に『「かおり」で珈琲飲みたいなぁ。カステラ食べたいなぁ』と思ったことは事実。
主人公の感慨に共感するところも多々だし、ラストに繋がる一連の持っていき方もうまいなぁってかんじですね。

他の方のレビュー等を見るに、「この本の良さがわかる年齢で読めてよかった」「この品格!まさに文学!」なんて書いてあって、やはり私にはこの本はまだハードル高かったのかなぁ・・とも思いますが、でもいろいろ思うところはあったのでヨシとします。数年後に読み返してみるとまた違った感想がもてるのかもしれない。

でも何より好きなのはこのタイトルでしょうか。
これって『いつか王子様が』から来ている・・・と思っていいんでしょうか。(違ってたら恥ずかしい)
なかなか洒落てるなぁと思います。
うん、好き好き。

読了日:2006年12月17日
2006-12-31-Sun-11-51

図書館戦争

図書館戦争/有川浩/メディアワークス
舞台は微妙に近未来的なパラレルワールド「正化31年」。
「メディア良化法」なる法律を基に、書籍映像音楽が検閲・取り締まりを受ける時代。その検閲を退け、あらゆるメディア作品を収集・提供できる権利をもつ公共図書館は、結果としてメディア良化委員会にとっての唯一絶対の「敵」なのです。
双方の抗争は激化の一途を辿り、図書館自体も武装し、自衛するようになります。

「公序良俗を乱すメディア作品を取り締まる」という大儀のもとに、恐ろしきファシズムを振るう国家VS独立図書館隊。

戦え!我らが図書隊!
守れ!我らが知の泉!

と、なんだか一昔前の特撮チックなテーマソングでも歌いたくなってしまうノリの作品なのです。

恐らく「本好き」を自認する方ならば、およそ9割以上の人は楽しめるのではないでしょうか。これでもか、というくらいに「本」への愛が満ち満ちて、もはや零れんばかりです。
死者が出そうなほどの攻防戦でも、図書隊員の胸にあるのは「本を守るのだ」という熱い想い。
時にキャラクターの口を借りて出てくるそれは、作者さん本人の心情でもあるのでしょう。本好きならばいちいち頷いてしまいたくなることうけあいです。

例えば、きちんと読めばそれが悪意のある表現でないことはすぐに分かるはずなのに、「NGワード」だからといって禁書扱いにすることだとか、「大人たちは『ためになる本を読みなさい』っていうけど、僕たちは『ためになる本』じゃなくて『読みたい本』を読むんだ」という少年の言葉だとか。

徹頭徹尾、本への愛で出来た作品です。
これが「本の雑誌が選ぶ2006年上半期ベスト1位」なのも、なるべくしてなった、というかんじでしょうか。
(逆に、普段本を読まない層にはそれほど訴えないかもね。まぁそもそもターゲット層ではないのでしょうが)

しかし「メディア良化法」や「図書検閲制度」なんて、現代社会でも妙にリアリティを感じてしまうところが怖いものです。
それがこの作品をただのエンタメとは言えないところなんでしょう・・・が、かといって、語り口は見事に「エンタメ」です。
キャラも立ってるし、勢いもテンポもいい。
最初は予想外の軽さに「あれあれ?」だったのですが、段々と掛け合い漫才のような会話の応酬にニヤリとしてしまうようになりました。
「戦争」なんて言えるくらいの状況なのに、キャラの濃い隊員たちの醸し出す雰囲気はなんだかわきあいあい。
なんとなく初期『キルゾーン』や特車二課(『パトレイバー』)を連想してしまったのは私だけでしょうか?

もっともそれが逆に「ラノベっぽい」と、否定的な見方をする人もいるようですが、うーん、どうでしょう。
このノリの良さと軽やかさがなければ、これほどの人気は出なかっただろう・・・というのも真実だと思うのですけど。
この軽みが諸刃の剣ってかんじでしょうかね、ま、それは好みの問題。

「図書館」で「戦争」だなんてキャッチ―なタイトルに、メディア規正法なんてものが現実味を帯びる現代の風潮への恐怖感と、軍隊青春物語かのようなラブコメ風さわやかさの絶妙な組み合わせが、不思議といいバランスで安定しています。
ちょっとかなり奇妙な設定なのに、とても普遍性を感じさせる作品なのです。

普段ラノベしか読まないという人にも読んで欲しい。
勿論読書家を自認している人も、読んで損はしないはず。
「マンガは頭が悪くなるから読まないわ」なんて人は・・・・
まぁ、無理して読まなくてもいいんじゃないでしょうか。ははは。
個人的にも共感できる部分は多々あったのですが、「(活字嫌いでもないのに)親や学校の薦める以外の本を読まないイイコなんて逆に怖いけど」というセリフでした。いや~実際身近にいるもんで。怖いです、確かに。
何が怖いって、そういう子は、そのこと自体を疑いもしないってことがですよ・・・。

読了日:2006年11月21日
2006-12-31-Sun-11-50

子羊の巣

子羊の巣/坂木司/創元推理文庫

「ひきこもり探偵」シリーズ2作目読了。
内容は前巻『青空の卵』とほぼ変わりませんね。短編連作で、鳥井と坂木の関係も進展がありません。なので、感想も前巻と大差ないのですが・・・2作目を読み終えて思ったことをいくつか。

まずはミステリとして。
男子高校生「利明」のエピソードが気になりました。
風船を持ってホームに立ち、駅員にプレッシャーを与える?というのが、なんとも。「風船」の意味を利明が知っているというのは結構無理があるのではないでしょうか。
あとは、まがりなりにも一緒に暮らし続けてきた父親の重大なアレルギー体質に全く気付かない子供、というのも、若干無理矢理っぽく感じてしまいました。まぁ安楽椅子探偵モノにそういう突っ込みは無粋なのかもしれませんが・・・。

もうひとつはやはり鳥井と坂木の関係について。
コレを貸してくれた友人とも意見が一致しているのですが、「鳥井ってひきこもりじゃないよね?」です。
一週間に一度しか外出しない・・・・って、それって学生時代の私でも普通にやってた行為なんですけど。それでも世間一般の基準からすれば「プチひきこもり」状態なのかもしれませんが。帯で「ひきこもり探偵」って煽ってるわりには?と思った次第です。

あとは対人恐怖症についても。
「絶対の存在・坂木」の頼みとはいえ、鳥井って結構初対面の人と普通に喋れていますよね。
勿論それはそうしないとミステリとして話が進まないからなのでしょうが、読む側としては、鳥井のトラウマがどうとか・・・ではなく、単に「ちょっととっつきにくい変人」レベルのように感じてしまいます。

友人Iちゃんも「ぬるい」と言っていましたが、「過去の対人関係に大きなトラウマがあってひきこもっている」とするには、ちょっと微妙な設定なんですよね、鳥井って。対する坂木も基本的には「いい人」でありながら、鳥井に対してのみエゴイズムを感じている・・・でもそのこと自体に罪悪感も感じていて、やっぱり「いい人」から逸脱しきれない。
そうでなくては坂木のキャラクターが成立しないというのは承知の上なんですが、どうにも「煮え切らないな~」という印象はぬぐえません。

友人Iちゃんと話していて、「もういっそ、鳥井はもっと激しくひきこもりに!坂木はもっとブラックになればいい!」と言ったらば、「それだとレーベル変わっちゃうから」と冷静な突っ込みを入れられてしまいました。

うぅんそうなんでしょうねぇ・・・・。

このシリーズは、ちょっと好き嫌いが分かれる作品かもしれません。
いえ私も嫌いじゃないんですけども・・・。

読了日:2006年11月19日
2006-12-31-Sun-11-49

青空の卵

青空の卵/坂木司/創元推理文庫

ひきこもり探偵・鳥井と、助手役の坂木による日常ミステリ。
短編連作ということもあいまって、北村薫や加納朋子を連想せずにはいられません、が。これはミステリであってミステリではない。
物語のテーマはむしろ、「鳥井と坂木の関係」です。

坂木は大多数の人間から「人のよさそうなお兄さん」と評される27才、サラリーマン。ごくごく平凡な彼にとって唯一の輝かしい存在、それがひきこもりの友人・鳥井です。2人は中学時代からの友人ですが、はっきりと尋常ではない関係にあります。
鳥井は子供の頃から美しい顔立ちで鋭い頭脳の持ち主でした。さらに歯に衣着せぬストレートな物言いにより、「孤高の存在」として坂木の心を虜にします。
「なんとかして彼と友達になりたい」と思った坂木は、「孤高」であるがゆえにイジメを受け、心の弱っていた鳥井のタイミングを見計らった上で「友達になろう」ともちかけます。このタイミングなら鳥井は断らないだろう、という、それは坂木の計算の上でした。

そして希望通り、いえ、坂木の期待以上に鳥井は坂木を慕うようになります。もはやそれは「友人として」というよりも「母と子のように」。「鳥井は僕という一神教の信者だ」と坂木が表現するほどに、鳥井は坂木に依存するようになるのです。

そしてこの物語のメインは、一見すれば「ひきこもりの友人を支える面倒見のいい好青年」である坂木の内面にあります。

鳥井の世界の中心にいるのが自分であるという自負と罪悪感。
鳥井への独占欲の充足と、彼を外に出さなければという相反する感情。
外の世界と接触し、精神の安定しつつある鳥井への喜びと、外の世界に出てしまえば自分以外の人間が鳥井の世界へ入ってくるのだという不安、嫉妬。
鳥井の世界の中心は坂木ですが、同時に坂木の世界の中心もまた鳥井なのです。

以前私の好きな作家さんが「依存しあって何が悪い。他人に依存することが出来ない自分だからこそ、不健康に依存しあう関係に惹かれるのだ」と言われていたのですが、全くその通り。
「彼(彼女)がいなければ生きていかれない」という状態は一個の生物としてはすごく弱い状態なのでしょうが、そんな存在が居るということは、きっととても幸せなこと。

「萌えだよ~」という貸してくれた友人の言葉に「そうか、萌えか」と思いながら読み出したのですが、想像以上の依存っぷりに、幾度となくにやけさせられました。でも「萌え」というのとはちょっと違うかなぁ。
いえ、なかなか美味しい設定だとは思いますけども。ストレートすぎるからでしょうか?もっと出し惜しみしてくれてもいいのに・・・なんて思っちゃいます。
「男同士の過剰な友情」というのはとてもキャッチ―なテーマだと思いますが、懇切丁寧に「相手への想い、自身のジレンマ」を語ってくれる本書は、そこらのBLよりも、ある意味とてもBL的なのではないだろうか、などと思ってしまいました。

ところでこの作者さん(主人公と同じ名前という有栖川有栖様式)って女性なのでしょうか?「友達に対する独占欲」なんて、とても女子っぽいなぁと思うのですが。ええ、身に覚えアリアリです・・・。

読了日:2006年11月15日
2006-12-31-Sun-11-48

むかしのはなし

むかしのはなし/三浦しをん/幻冬舎

三浦しをんの短編集。刊行当時、なかなか評判になったと記憶しています。
タイトルは、各話が「主人公が自身の思い出(のようなもの)を語り伝える」というところから来ているよう。(ということに、前書きを見直してから気が付きました)

かぐや姫や桃太郎など有名な「むかしばなし」の要素を各話ごとに取り入れ、現代版に語り変えた本書。とはいえそれほど直接的にではなく、例えば『ラブレス』なら「かぐや姫」のように、様々なものを貢がられるホストの話、『ディスタンス』なら「天女の羽衣」のように、想い合いながらも絶対的に超えられない壁に阻まれる男女の話・・・という風に。

そして後半のエピソード『入江は緑』『たどりつくまで』『花』『懐かしき川べりの町の物語せよ』は、全て「隕石との衝突により人類は滅亡する」というタイムリミットが告知された後の世界、ということで共通した時間の物語になっています。
個人的にはそちらの流れのほうがより興味深く読めました。

「三ヵ月後に人類は滅亡します、脱出ロケットへの搭乗は抽選です」なんて言われたら、果たして世の中どうなるでしょう?
この作品のキャラクターのように、それまで通りの生活を続ける人もいれば、「どうせ死ぬのだから何をやってもいい」といって犯罪に走る人もいるでしょう。
妙にテンションをあげるわけでもない「終末」の描き方が虚無的な雰囲気を伝えてきて、不思議なリアリティを感じます。

私が好きなエピソードは『ディスタンス』のいびつな恋愛感情、『懐かしき川べりの町の物語せよ』の青春小説な雰囲気(しをんっぽい、といえるかも)。あとは『たどりつくまで』のミステリっぽいオチもなかなかだし、『花』も印象的だったかな。

評判がよかっただけに、どの話も完成度高いです。
同じシリアス路線でも、『私が語りはじめた彼は』よりずっといい読み心地。
結局人は誰かと繋がらずにはいられない、繋がっていたいと思わずにはいられないのだ、ということを静かに伝える一冊でした。

読了日:2006年11月12日
2006-12-31-Sun-11-47

という、はなし

という、はなし/フジモトマサル絵・吉田篤弘文/筑摩書房

フジモトマサル氏のイラストに吉田さんが文章をつけるという形式の連載をまとめたもの。ひとつひとつ、とても短いお話です。

実は最初の一編を読んだとき、「あれ、これ、エッセイ?」と思ってしまいました。全体のテーマが「読書の情景」なので、ほぼ前編が「読書」についての作品になっています。なのでその雰囲気から、吉田さんの本への愛情が綴られたエッセイ集なのかと勘違いしてしまいそうになったのです。
でも最後まで読んだ今改めて考えると、あながち間違いでもなかったのかも・・・とも。

恐らくは吉田さんご本人、いやクラフト・エヴィング商會の吉田夫妻にとって、「本を読む」ということはとても大切なものなのですね。
それは2人によって作られた本を見れば一目瞭然。
勿論最重要項目は本の「中身」であるのでしょうが、表紙カバーの色やデザイン・文字のレイアウト・紙質など、本にかかわるあらゆること・・おそらくその本が読まれる時間や収まる場所のことまで考えられているのでは?と思ってしまうほど、クラフト・エヴィング商會さんの本からは、本への愛情を感じてしまうのです。

そんな吉田さんが「読書」をテーマにしちゃったものだから、そのラブ・パッションはいつも以上。本好きを自認している方ならば、見に覚えのあるエピソードのひとつやふたつ、あるのではないでしょうか。
私の場合は『眠くない』。これにつきますね。
そう、気合って空回りするものなのですよ。

睡魔と戦いながら本を読み続けるもよし、
あっさり敗れて夢の国に連行されるもよし。
どちらも大変幸せな時間でございます。

読了日:2006年11月9日
2006-12-31-Sun-11-46

ポーの話

ポーの話/いしいしんじ/新潮社

『ブランコ乗り』に続いて、いしいしんじ2冊目。
いやぁ・・・・・ちょっと、頭の中がぐるぐるになりました。

「うなぎ女」の子供「ポー」は、真っ黒な姿で泳ぎの得意な少年。ポーはうなぎ女たちに慈しんで育てられるが、ある日「メリーゴーランド」というあだ名の青年車掌と出会ったことで、新たな世界を知る。
女をたぶらかしては盗みを繰り返す青年メリーゴーランド、そして幼児のように小柄な妹・ひまし油。 彼らによってポーは様々な知識を与えられ、感情というものを知るようになる。
いびつながらも安定した3人の関係は、しかし突然の500年ぶりの大洪水によって打ち砕かれてしまう。慣れた町から流され、「天気売り」とともに新たな土地へと旅立つポー。

・・・という話で間違ってはいないはずなのですが、こんなあらすじでは全くこの作品の的を得ていない気がします。どうにも説明のできない、不思議な作品なのです。
うなぎ女やひまし油など、独特のネーミングで演出された世界観は、不思議世界という意外には何とも言えない雰囲気。ちょっと宮沢賢治っぽいかも。ネーミングに関していえば、長野まゆみを連想したりもしました(蜜蜂・・・とか。懐かしい・・・)

とにかくめくるめく不思議ワールドに、冒頭から翻弄されっぱなしです。
普段ミステリ系が多いもので、この手の作品への入り方を忘れてしまっていたのでしょうか・・・・・正直、大洪水のくだりに入るまでは読むのを辞めようかと思ったことも。
でも二部以降、作品世界に慣れてしまえば、自分でも意外なほどすいすいと読めるようになりました。それは多分人とも魚(うなぎ?)ともつかなかったポーが、たくさんの人々との出会いによって、段々人間らしくなっていったからだと思います。たくさんの出会いと別れによって、時には哲学的な言葉まで呟くようになるポー。
他人にとっての「大切なもの」が理解できるようになったポーは、他人のために「つぐない」をするようになります。

「つぐない」とは何なのか?
人と人との関わり、人と世界との関わり、世のあらゆるものは繋がっているということ。

この作品を半分も理解できたとは思えない私が感じた『ポーの話』のテーマは、以上の2点です。

読みやすくは、ない。
けれども読みすすめるうちに、何ともいえない力を感じる作品です。
私の頭では消化できなかった部分も多々なので、「すごくいい!」とは堂々と言いにくいけれど、「よくわかんないけどスゴイ!」とは言えますです、ハイ。
もっとも正直にいえば、分かりやすかった『ブランコ乗り』のほうがしっくりはきましたけどね・・・・
あ、あと花だらけの漂流船のシーンはロマンチックで好きでした。

読了日:2006年11月7日
2006-12-31-Sun-11-45

ハートブレイク・レストラン

ハートブレイク・レストラン/松尾由美/光文社

主人公である20代後半のフリーライター(独身・女)は、仕事場としてもっぱら近くのファミレスを愛用していた。何故ならそこはファミレスであるにも関わらず、常に閑散として静かであり、彼女にとって大変ありがたい環境だったからだ。しかしある出来事をきっかけに、このファミレスの、ファミレスならざる寂しげで哀しげな雰囲気の理由を知ることとなる。
彼女がずっと「常連客」だと思っていた「着物を着た品のいいお婆ちゃん」は、なんと幽霊だというのだ。しかもこのお婆ちゃん、人伝えの話だけで見事に名推理をしてしまうという妙な特技を持っていて・・・・・

という、短編連作集です。
全てファミレスが舞台であり、お婆ちゃん(ハルさん)が安楽椅子探偵の役を果たします。事件がおこる、とはいえどれも日常ミステリ系のほのぼの事件で、ハルさんによってきちんと謎は解かれ、オチでもやもやするということはありません。

キャラクターたちもなかなかいい味。
まずハルさんの意外と現実的な(恋愛面とか金銭面とか)ところにはニヤリとしますし、個人的には思い込みの激しいファミレスの店長も好きです。
後半にはヒロインの恋愛も匂わされますが、なんだか中学生日記のような純情ぶりで、大変可愛らしいレベルでおさまってるあたりも好感度大。

誰もが安心して読めるテイストですね。
オーソドックスな日常ミステリものですが、設定がちょっと捻ってる。私は好きなタイプですが、ライト過ぎてちょっと物足りないという人もいるかもしれません。普段ミステリを読まない女性に好まれそうなかんじ、といえば伝わりますでしょうか。

この作者さんの本は『安楽椅子探偵アーチ―』を読んで以来2冊目だったのですが、シリーズものの『バルーンタウン』も設定だけは知っています。
この方、「探偵」の設定が特殊な方ですね。
「椅子」の次は「幽霊」かぁ・・・・と、変なところで感心してしまいました。はてさて次は何がくるのでしょう・・・・。

読了日:2006年11月3日
2006-12-31-Sun-11-44

四龍島シリーズ 花鬼幻燈

四龍島シリーズ 花鬼幻燈/真堂樹/集英社コバルト文庫

自慢じゃありませんが、私の高校時代はほぼ「講談社ノベルス」と「コバルト文庫」で出来ていた、といっても過言ではありません(本当に自慢じゃない)。ちょうど新本格ブームが巻き起こっていた時期で、友人たちと先を争うように京極や森博嗣や有栖川有栖を読み漁っていましたが、同時に、それをうわまらんばかりの情熱でもって読み込んでいたのがコバルト文庫の数々のシリーズたち。中でも私のお気に入りが、この「四龍島シリーズ」でした。

全25巻で完結しているのですが、いまだに年1回のペースで番外編が刊行されています。それは何より作者のサービス精神と、四龍島ファンの根強い声援のたまものでしょうか。買い出してからかれこれ10年・・・以上?なんて考えると、眩暈をおこしそうになってしまいます。

ストーリーそのものは一話完結、本編の後日談なので、実はそんなに期待はしていません。キャラクターもおなじみの面子ばかりで、特に目新しいこともないですし。では何故私がこのシリーズを買い続けるのか。

10%は惰性、
20%は受け狙い、
30%は本気で読みたくて、
40%は過去の思い出に浸るため。

本音をいえばこんなところでしょうか・・・・・。

「懲りずに今年も買っちゃったよ」なんて、当時一緒にコバルトを読んでいた友人にメールして、「アンタも好きだよねぇ」って突っ込んでもらうのが楽しみだったり、
「何年たっても色気があるなぁ・・・そういえば○巻のあのシーンについて皆と語り合ったよねぇ」なんて、高校時代のことを思い出したり。
そういう楽しみ方をしちゃってるんですよねー。

小説の読み方としては邪道でしょうけど、毎年番外編を刊行しているという作者の行為自体がファンサービスなんですもの、こんな読み方も間違いじゃないと思うんです。

それに思春期の頃ハマった作品というのは、きっと人生において特別な存在なんですよ。もしも今、すばらしく素敵な作品に出会ったとして、あの頃のようにそれに夢中になることはかなり困難だと思います。
それは主にキャラクターへの思い入れの強さの違いなのでしょうけど・・・それだけに、当時肩入れしたキャラクターには、未だにふっと燃え上がってしまうこともあります。
手もとに現物があれば読み返したり、なければ夜な夜なネットの海をさ迷って、翌日寝不足で出勤したり。行動パターンは10年たっても変わりませんね、きっと10年後も同じことをしている自信があります。

読了日:2006年11月1日


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