フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2010-02-27-Sat-22-20

味のぐるり

味のぐるり/入江相政/中公文庫

これも2009年の年末に読んだ本。
これで本当に2009年の記事終了です。

長く昭和天皇の侍従長として宮内庁に勤務していた入江さんの「食」をテーマにした随筆。
入江さんはこれで3冊目なのですが、格式ばった肩書き(クナイチョー、とか、家柄はレイゼイケ、とか)のわりにとっても飄々としたお人柄が文面から漂ってきて、肩の抜け具合がなんとも楽しい文をお書きになるのです。でもそれでもただ漫然と「楽しい」だけじゃなくって、とても嫌味のない綺麗な日本語というのは、やっぱり育ちなのかなあ・・・それとも時代なのでしょうか。
戦争に旅立つ青年の手紙ひとつでも、ふたつみっつくらい世代が前の人たちの文章って、とてもきちんとした品の良さというものがありますよね。口語と文語が一線を保っていたという雰囲気。

携帯メールが普及してから若者の文章力が向上した、なんていう話を小耳に挟んだことがあるのですが、それは果たしていかがなものか。もちろんそういう一面もあるでしょうが、文章というものが身近になったがあまりに非常に安っぽいものになってしまったなあという気がするのが私の本音です。
いえいえ、もちろん自分もその一人なわけですが。
まあ、こうしてブログをやったり長い長い長文メールを携帯で手軽にやったりしている人間にはそんなことを言う資格などはございませんね。でもだからこそ、たまに美しい日本語に出会うと、ふうむと背筋が伸びる気持ちになるものです。

あ、重ねて言いますが、入江さんのいいところは全然そんな固くはないところなので。
もはや古本でしか出会えないので、気長にブックオフに行くたびに探してみようと思うのであります。ハイ。

味のぐるり (中公文庫 M 62-5)味のぐるり (中公文庫 M 62-5)
(1982/01)
入江 相政

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2009-09-09-Wed-22-31

きみはポラリス

きみはポラリス/三浦しをん/新潮社

三浦しをんの短編集。
中身を全然知らずに図書館で借りて、中身が「恋愛短編集」だと分かったときはちょっと驚きました。いえ、いろいろ書いてるのはもちろん知ってるし読んでるんですけど、彼女のいつものテンションと自分語りを知っている者としては(私、しをんのネットエッセイのかなり初期からの読者だという自信はあります。最近また日記復活して嬉しい)、

「えー、しをんが普通の恋愛小説?柄じゃないよー」

なぁんて思ったのです・・・が。
ハイ、もちろんしをんがそんな普通の甘っちょろい恋愛小説で満足するはずないですもんね。
伊達に人生の半分以上魂をこめてBLを読み込んでませんもんね。

というわけで、いろいろな味わいに満ちた恋愛小説でした。
恋愛・・・恋愛?友情?人間愛?それとも愛ではないもっと何か?という印象も受けますが、これをひとつの言葉で表せといわれたならばやはり「恋愛」なのかなあ・・・という気もします。不思議。

個人的に面白いなと思ったのは、

・老夫婦の秘密
・神様に恋をした少女
・俺ロハス
・男子高校生と、その後のふたり

です。
恋愛小説といっても、若い女子が若い男子と出会ってどうこう・・・というだけの話じゃないのは当たり前。
なんでその人だったのか、なんでその人じゃないといけないのか、他の人じゃ駄目なのか・・・。
そういう葛藤をおしてなお「その人」じゃないと駄目なんだって思える唯一の人に出会ってしまうということ(ひょっとしたらそれは幸せではないのかもしれない)、それこそ「恋愛」というものなんじゃないの?それくらいのレベルで初めて「恋愛」って言えるんだよね?って、なんだかこれはしをん流「恋愛至上主義日本」に対するアンチテーゼ・・・というのはさすがに言いすぎでしょうか。
よしながふみの漫画なぞを読んでいてもたまに思うのですが、「自分は恋愛体質じゃないのよ」って言ってる人のほうがきっと「恋愛」・・・「純愛」に対する憧れというか、思いが強いんじゃないでしょうか。
うまく言えないんですけどね、「この人じゃなかったら死ぬ」っていうくらいのっていうか。

自分にとって唯一絶対の人、それがあなた。それがきみ。
だから三浦しをんはこの本のタイトルを『きみはポラリス』にしたのでしょう。
短編集だから、収録短編の中のどれかが『きみはポラリス』なのかなと思ったんですが、そうじゃなかったみたい。この本全体のタイトルが『きみはポラリス』なんですね。たしかに、どの作品にも共通するものを表すタイトルだと思います。
だって、ポラリス=北極星、ですもの。
その人が自分の世界の中心であるということ。
それはちょっと怖いことかもしれないけど、羨ましいな、とも思います。

いろんな意味でしをんらしい一冊。
重い話もクスリと笑える話もちょっとソッチ系の話もあって、「らしさ」をぎゅっと絞り込んだような一冊だったなと思いました。

きみはポラリスきみはポラリス
(2007/05)
三浦 しをん

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2009-08-19-Wed-20-07

風が強く吹いている

一ヶ月も前に読んでしかも感動したのに記事にするのを忘れていた!

風が強く吹いている/三浦しをん/新潮社

文庫になったしマンガにもなってるし舞台にもなったらしいし、ついでに今度は映画にもなるらしいので知名度的には抜群!ですねー。
実際にはさんざん「いいよいいよ!」と聞いていたので、ちょっと構えて読み始めたところもあったのですが、読み終えてみると自分でも意外なくらいしみじみジーンときました。
スポーツもの自体ちょっと苦手で、自分からはなかなか手を出さないジャンルなのですが、これはスポコンものとか敬遠してる人にも読んでほしいなあ。

物語はいたって単純。
廃部寸前・・・どころか、駅伝部の「え」の字すら影も形もない某大学。
すべての始まりは、そこに一人の「天才ランナー」が入学することから始まった。
金もない、住むところもないのだという彼に親切めかして下宿を提供した一人の上級生。彼にはゼロからのスタートで「箱根を目指す」という、大きな野望があったのだ。
彼の情熱に問答無用に巻き込まれるまま、下宿に住まう素人大学生たちの奮闘が始まった・・・!

・・・という。
ね、ありがちっちゃーありがちです。少年漫画の王道ってかんじ。
でもね、その王道が心地いいんだわ。
やたらめったら精神論に走るわけでもなく、経験によるたしかな練習方法と、挫折を知るからこその重み。
決してスポーツだけ、その競技だけ、一位になることだけがすべてじゃないんだぞ・・・って、よく言いますけど、でも結局皆一番を目指すじゃない?勝ったほうが嬉しいじゃない?他人と競い合うのが嫌だから、だから私って体育会系の人苦手なのよね・・・なんて、天邪鬼な私なぞは常々思っていたのですけれども、でも本当にひとつの壁を乗り越えた人(アスリートに限らず)っていうのは、他人とどうこうっていうよりも、記録そのものというか自分自身というか・・・うーんどうしても陳腐な言い方しか出てこないけど、そういうものを戦っているんだろうなぁと思いますね。
この年になって、やっとそういう風に思えるようになってきましたよ。

やっぱり「スポーツ最高!スポーツやんない奴は人間以下!」みたいな人とか(現実にいるんですよそういう人・・・)、お山の大将でことあるごとに運痴の人間をこきおろす人とか(ええ不器用ですし体力もありませんよ運痴の愚痴ですよ!)のことは好きになれそうもないんですけど、ちゃあんと他人の痛みとかいろんな事情とかを汲み取れるような想像力もあって許容量も有る人、もしくは自分の力量をよく把握できてる人・・・っていうのは、やっぱり一目置いちゃいますね。

ま、この作品に関しては頭を空っぽにして、前情報もなーんにもなしな真っ白な状態で読んでいただきたいです。幅広い年齢層の方が読んで楽しめる一冊です。それは間違いない。
単純にキャラクター小説としても楽しいし、青少年たちが大人に目覚める過渡期としての青春小説でも。個人的にはやっぱり王子が好きだったり・・・あのヘタレ具合が!

しをんも、『まほろ町~』じゃなくてこれで直木賞をとったらちょっと評価違ったかもしれませんね。いや『まほろ』も決して悪くはなかったんですが・・・
シリアスなものとエンタメよりのものと、交互に出しているような気がするしをん。
どっちも書けるっていうのは強みですよねえ。

風が強く吹いている風が強く吹いている
(2006/09/21)
三浦 しをん

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映画はいったいどうなるんでしょうねー。
ただのスポコンムービーにされちゃったら嫌だなあ・・・どうでもいいけど、林君はスポーツ映画に愛されすぎ(バッテリー、DIVE!)だと思うんだ。
2009-08-15-Sat-18-20

少女マンガにおけるホモセクシュアリティ

少女マンガにおけるホモセクシュアリティ/山田田鶴子/ワイズ出版

一ヶ月くらい前に読んだ本なんですけど、軽い感想を。
えーとタイトル通りの中身なんですけどね、はい、タイトル見た瞬間図書館から借りていたことは否定しません。

どうもコレは、作者が大学?大学院?の論文としてまとめたものを出版することになったものらしく、そういう点で、作者本人が純粋にこの道・・・というか、つまり昔で言うJUNE、今で言うBL、それともそういうものを好む女性心理のいずれかに興味を持っているのか?というのはよく分かりませんでした。
たぶん一番後者なんじゃないかなあ。「とにかく好きなのっ!」って気持ちが伝わってこなかったから(ま、卒論だと思えばそれもしかりなんですけどね)。

全体の印象としては、まあざっくりした概要ですね。
特に70年代に登場した美少年ものを源流として語られています。ただし、現在のBLの隆盛については手付かずです。
その辺がちょっと不満でした・・・。
まあ無難といえば無難ですが、70年代に性的に鬱屈していた少女たちがいわゆる美少年に自分を仮託して「禁断の愛」を楽しんだ、という点でまとめようとしているのでしょうが、仲間うちだけでひっそりと楽しむものであった70~80年代のいわゆるJUNE的なものと、90年代後半以降のあっかるいBL作品とでは、なんというかその根源にあるものが別な気がするんですよね。
でもまったく別なわけではなくて、私自身も確かにその両方のジャンルの喜びを受ける身なものですから、やっぱり共通するところはあるわけで・・・
その辺のところをさっくり無視して纏め上げている点がちょっと引っかかりました。

まあ、BL(JUNE、やおいを含む意味での)の簡単な歴史という点では初心者向けにいいんじゃないでしょうか。ソコソコ知ってる自分としては、特に目新しい意見はなかったのですけどね。
まあ学生論文にそこまで求めるものではないかなー、と思います。
しかしこの人、自分が特別JUNEものが好きではないんだったら、なんでわざわざこんな題材を選んだのだろう。(いや、最後まで読んでもやっぱりこの人別にJUNE好きじゃないと思ったんです)
ま、ガチな人じゃないほうがかえって客観視できるものなんでしょうけどね・・・。

少女マンガにおけるホモセクシュアリティ少女マンガにおけるホモセクシュアリティ
(2007/07)
山田 田鶴子

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個人的には、やっぱりJUNEの源流は森茉莉、さらには吉屋信子あたりの女学校浪漫のあたりまで遡るべきだと思います。精神の結びつきをこそ至上とするあたりに同じ臭いを感じるので・・・。

2009-08-13-Thu-23-23

倒立する塔の殺人

倒立する塔の殺人/皆川博子/理論社

図書館で、一般文芸書とは別コーナーに設けてある「ヤングコーナー」で発見し、喜びいさんで借りてみた一冊。
ずっと気になってたんですよー、だって皆川博子の学園モノ(?)ですよ!最強!
しかしタイトルからはまったくどんな中身なのか分からない(表紙イラストもまたそれを助長している)本ですね・・・それもまたヨシ、ですが。


戦争が終わった。
疎開していったもの、空襲で死んだもの、生きているのやら死んだのやら分からぬものも多い中、母と妹を亡くした女学生・阿部欣子は、焼けた母校近くのミッションスクールに登校した。校舎を焼失した都立女学校は、近くのミッションスクールに間借りをする形で授業を再開したのだ。
戦時下の時は熱烈な軍国主義者だった教師が、得意顔で共産党員だと名乗る。
あれほど高圧的だった大人たちが、手の平を返したように「民主主義」第一という。
それを素直には受け入れがたい欣子に、同級生の三輪小枝がそっと本を差し出してきた。「読んでほしいものがある」という小枝の言葉を受け、欣子はそれを読み始める。
それはただの本ではなく、綺麗に装丁されたノートに書き込まれた手記だった。それも、複数の人間の。
蔓薔薇模様の囲みの中には、謎めいたタイトルがあった。
『倒立する塔の殺人』。
少女たちの間で流行した、物語の回し書き。
交錯する手記と、それぞれの手になる物語。
不気味な存在・久仁子、魅力的な上級生・律子とその友人・杏子、その二人に憧れる少女・小枝・・・そしてそれを読む欣子。
戦時下という特殊な状況でも少女たちの思いは、やはり少女たちのものである。
思いのたけを綴ったノートには、本当の声が記される。
だからこそ、そこには真実が記されているはずなのだ。
一人の少女が死んだ、その謎だらけの理由でさえも・・・。


というわけで、皆川博子による女学園ミステリです!
もうこの設定だけで食いつきますね。しかも舞台は戦時中(戦時後直後)という・・・ああ、好みすぎです。
戦争中という浪漫とは間逆の世界でもなお、少女たちには少女たちのコミュニティがあり、精神世界があったようです。いや、「だからこそ」かな?そうでなければ、生きていけなかったのかも。
少女たちによる別世界のような女学園風景と並んで描かれる戦時下のエピソードは冷静なだけにひどく恐ろしくて、死と日常が隣り合わせだったという事実をはっきりと突きつけられます。
皆川さんは1929年生まれらしいので、まさにリアルタイム世代なんですね。少なからず自分の経験が反映されていると思うんですけど、そう思うとなおさらリアルで、この時代の恐ろしさにほんとに怖くなりました。
戦時中の描写も怖いんですけど、ひたひたと忍び寄るような作中作もまた怖かった。
実はちょっと酒の入った状態で読み終えたのですが、そのせいでしょうか、必要以上にこの物語が恐ろしくなってしまって・・・狂気と紙一重で精神の均衡を保っているような危うさ、とでも言えばいいのでしょうか。それもまた皆川作品の魅力なんですが。

皆川博子による皆川博子らしい学園ものです。
死と狂気と浪漫と美学、そして謎。
そう、これはあくまでミステリなんですけど、でもやっぱり幻想小説でもあるし、少女小説でもあるんです。
だからといって「ヤングコーナー」に置くべき本かどうかははなはだ疑問ですけどね。普通に一般文芸の皆川さんのコーナーにも置くべきだと思うなあ。

いや、面白かったです。
皆川ファンなら是非。それでなくとも、「戦時中の女学校」「エス」「少女たちによる少女たちのコミュニティ」というのに興味のある方なら、面白く読めるんじゃないかなー。
でもこういう趣味に走りまくった作品でもやっぱりミステリとしての体裁を保っているあたり、やっぱり皆川さんて基本はミステリの人なんだなあ・・・(と、思ったんですけど、調べたらデビューは児童文学なんですね。意外すぎる)。
ミステリとしては突っ込みたくなる箇所もありますが、それをはるかに超える雰囲気が何も言わせなくなってます。皆川クオリティ!

倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)倒立する塔の殺人 (ミステリーYA!)
(2007/11)
皆川 博子

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最後の最後、戦争の終わった東京でたくましく暮らしはじめる決意をする欣子が、空襲で亡くなった仲良しの同級生・季子について思う箇所でちょっとじんときました。どんと構えた現実主義者っぽい欣子の心に、ふとよぎるのは、可愛らしい同級生・小枝ではなく、やっぱりあだ名で呼び合うコンビだった季子のことなんだなーと・・・。
語られなかったけど、季子が亡くなったと聞いたとき、それはそれは欣子は悲しんだのだろうとか。
全然作中には関係のない存在なんですけどね。ひょっとしたら皆川さんは、実際に亡くした友人のことを思いながらこのキャラクターをふっと登場させたのかな?なんて思いました。
うん、もしからしたら嫌われ者の読書少女・設楽久仁子が作者の投影だったりして・・・?

退廃浪漫で放りっぱなしにするんじゃなくて、欣子というしっかり者のキャラクターを語り手にすることで、最後も明るくなったと思います。
このさじ加減が、上手いなあ、と思わされました。

『設楽久仁子と上月律子、そしてわたしには、共通したところがある。わたしたちは、切り花なのだ。空想・・・あるいは物語・・・という水を養いにしなくては枯れ果ててしまう。しかも、その水には、毒が溶けていなくてはならない。毒がわたしたちの養分なのだ。
阿部さん、あなたは違う。あなたは、日常の生活という大地にがっしりと根をのばし、健全な栄養を得ている』

これは小枝による手記の部分ですが、なんとなく共感してしまいました。
たぶん世の中には、物語を必要とする人と、必要としない人の二種類がいるんです。
どちらが立派というわけではないけど、たぶん、そうなんだろうな。

2009-08-11-Tue-20-44

ユージニア

ユージニア/恩田陸/角川書店

『ユージニア』、たしか評判になった作品だったな・・・という記憶をたよりに借りてみました。調べてみたら、直木賞候補になった作品だったみたいです。
では、ざっくりとしたあらすじから。

物語は、それぞれの語り部によって語られる。
さまざまな人の目を通してみた、数十年前の不可解な殺人事件。
人望厚く、町の中心となるような医師一家の祝いの席を襲った惨劇・・・持ち込まれた祝いの酒、ジュースにより、一家全員と偶然そこに居合わせた者17人が毒殺されてしまったという、無差別殺人。
はじめの語り手となる者は、小学生の時にこの事件現場に居合わせた主婦・満喜子。
遅れて行ったためにジュースを飲まなかった彼女は、あの日あの時の惨劇の目撃者だった。大学生になった彼女は、取り付かれたようにこの事件のことを調べ始める。さまざまな関係者に会い、話を聞く。それを一冊にまとめあげた本『忘れられた祝祭』は、ベストセラーとなった。
だが彼女は、本が出したかったのではない。
ただ、知りたかったのだ。
精神異常の青年による犯行として、犯人死亡のままに決着のついたあの事件は、決してそんな簡単なものではなかったのだと確信するために。
『選ばれた』少女、緋紗子が巻き込まれたあの事件は、そんなものではなかったのだという根拠のない確信の裏づけをとるために。
そして、数多くの関係者から語られる「事件」の真実とは。
当事者の数だけ、真実はある。
果たして、本当の「真実」とは存在するのか・・・。

・・・ああだめだ、あらすじになってない。
とりあえず、「藪の中」っぽい構造です。ほほうこういう趣向のミステリね、と思って読み始めました。・・・が、最後まで読んで、まず思ったのは、「アレ?」ということ。
おっと、ここから先はネタバレになるので以下に。

ユージニアユージニア
(2005/02/03)
恩田 陸

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2009-08-07-Fri-23-21

人魚は空に還る

人魚は空に還る/三木筀子/東京創元社ミステリ・フロンティア

表紙と設定に惹かれて手に取りました。
だって、

『心優しき雑誌記者と超絶美景の天才絵師、ふたりの青年が贈る帝都探偵物語』

ですよ。
これは好きな人は好きだろうし、逆に食傷気味だという人もいるかもしれない。
文明開化の香りも豊かな明治の頃を舞台にした、心温まる短編ミステリ集です。
・・・・うーん、そうとしか言いようがないな。
舞台が好みど真ん中すぎてあまり客観的に読めなかったと思うんですけど、まあ突っ込みどころのない話です。悪い言い方をすれば無難?かな?サラサラと読めたのだけど、逆にひっかかるところがなかったというかんじ。人情味あふれる日常ミステリ系、とも言えるかもしれないけど、なんだかピンとくるところがなかったです。
天才絵師は美形である必要があったのだろうか・・・?とかも気になって。いえもちろん登場人物は美形のほうがより楽しいのはもちろん!なんですけどねー。この話の雰囲気でいくんなら、ソコソコの二枚目くらいでよかったんじゃないの、と。微妙な設定が微妙にこのお話をラノベっぽくさせているというか、まあもっと直接的な言い方をするならBLっぽくさせている・・・というか。いえ、全然そんなテイストはないんですけどね。そういう読み方が出来る、というだけなんですけど。
それはもしかしたらそうした方が人気が出るから→そしてシリーズ化?っていう狙いがあってのことかもしれないけど・・・どんなんでしょう、それならホワイトハートとかそっち系のレーベルのがいいんじゃないのかなぁ、と。

小川未明の人魚話とかルパンに憧れる怪盗ロータスとか・・・後半の雰囲気が好きだっただけに、微妙にパンピー向けでない雰囲気を漂わせているのが残念。
でもバランスのいい、破綻のないお話だったと思います。うがった見方をしなければ良作といっていいのかもしれない。
最近どうもひねくれて、困ります。


人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア)人魚は空に還る (ミステリ・フロンティア)
(2008/08)
三木 笙子

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明治ものが好きな女性にはお勧めです。
2009-07-24-Fri-16-31

チョコレートコスモス

チョコレートコスモス/恩田陸/毎日新聞社

恩田陸版の「ガラスの仮面」だと聞いて、ずっと気になっていた本。
ようやく読むことができました。
で、感想は・・・・うん、確かに!マヤVS亜弓!紅天女!
これ以上ないくらいに的確な表現だと思いました。
うーん、まさに「ガラスの仮面」であることよ。
あ、でも月影先生はいないなぁ・・・。

チョコレートコスモスチョコレートコスモス
(2006/03/15)
恩田 陸

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盛り上げて盛り上げて、さあ、これからだっ!
ってとこで終わらせることが多いのが恩田作品の特徴・・・だと以前どこかで目にしたことがあるのですが、今回の『チョコレートコスモス』については、それがいい効果になっていると思います。
演技バトルにわくわくして、さあどうなるのこれからどうなるのっ!?ってところでEND。
続きが見たいなーと思うところで終わるのが一番綺麗ですよね。
それにしても、現実に演劇の世界がこのようであるのならば、華やかな芸能界の裏側とはそれはそれはストイックで厳しい世界であることよ・・・。

2009-07-22-Wed-17-26

左近の桜

左近の桜/長野まゆみ/角川書店

ずいぶん久しぶりに読んだ長野まゆみ。
長野まゆみは私的には若干当たり外れのある作家なのですが、今回は無事「当たり」でございました。よかったよかった。

主人公は、左近桜蔵。男子高校生。
「桜蔵」と書いて、「さくら」と読む。彼はこの名前を決して気に入っていなかったし、まして雅な由来がありそうで実はない苗字を名乗るのも気が進まなかった。
彼の家、「左近」は、看板を出さない宿屋を営んでいる。世に言う、「連れ込み宿」だ。
妻子持ちで世間では名の知れた紳士連中が、こっそりと情人を連れ込む場所・・・おまけに、その情人はたいていが道ならぬ相手、つまり、男だったりする。
そんな稼業の家に生まれた桜蔵自身もまた、父の分からない私生児だったりする。一応父だと認識している人物はいるけれど、その男が決して遺伝子上の父でないことは確信しているのだ。
そんな生まれの桜蔵には、不思議な癖があった。
この世ならぬもの、この世とあの世の間に住まうものを、拾ってきてしまうのだ。
桜舞う季節に駅で出会った男、霊園の中に横たわる男、雨の夜に尋ねてきた蝶の肌をもつ男・・・どうしたわけだか、男ばかりを。
父も、宿の常連も、桜蔵をさして、「女」だと言う。
戸籍上も生態学的にも一人前の男であるはずの桜蔵を、「女」なのだと。
反発する桜蔵は、だが確かに「女」なのだ。
ある特殊な目をもつ男たち、この世ならぬ者たちにとっては・・・。

というわけで、異界モノの連作短編集です。
『家守奇譚』とか『百鬼夜行抄』とかそんなかんじですね。一応舞台は現代のはずなのに、まるで明治大正あたりの日本が舞台であるかのようなノスタルジックさを感じるところが、長野まゆみワールド。
現実世界との狭間を超えてやってくる異界のものとの遭遇と、ほのかに香る性の匂い。
ザッツ☆長野まゆみってかんじです。
好き嫌いはあるんだろうけど、好きな人にはたまらない作品なんじゃないかなーと思いました。

左近の桜左近の桜
(2008/07/24)
長野 まゆみ

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解決されない部分いくらかあります。
結局羽ノ浦の正体は?とか、骨壺云々は?とか、征が思う相手は誰なの?とか・・・。
でもまあ全部が全部を割りきらないところも、この作風なら許せるというか。余韻というか、そんな味わいになっているんじゃないかな、と。
こういう設定の主人公にあえてガールフレンドの存在を匂わせているのが初期の長野まゆみとの違いかな?とも思いますが、ここまで存在感薄いんじゃ、あんまり居る意味ないよな・・・と思ったり。ううん・・・

ちなみに読んでいる間中、頭の中で藤たまきの絵柄が浮かんでいました。
匂うBL臭、だけども決して露骨でいやらしくはなくて、懐かしい文学風の・・・というか。
一見柔らかそうなのに硬質な、独特の存在感。
漫画化するなら藤たまきだよなー、と思いました。

2009-06-18-Thu-18-24

とらドラ!

とらドラ!全10巻(+番外2巻)/竹宮ゆゆこ/電撃文庫

2008年の秋~冬に放送していたTVアニメ版を見て、友人から借りた原作小説。ようやく読み終わりました・・・ラノベだと思って甘くみていたら返り討ちでした。久しぶりのラノベは一般小説よりエネルギーを消費するということが分かりましたよ。

で、感想なのですが。
個人的にTVアニメから入った者としては、「まんまである!」という点につきます。元々学園ラブコメとして非常にテンポがよくて絵が綺麗だなーと思って、そこから原作に入ったのですが、その掛け合いというのは原作のテイストだったんですね(でもそれをぎゅっと上手く濃縮したのはTVアニメスタッフの腕かと)。
私としてはこの作品のあっかるいハイスクール・コメディ部分に惹かれたので、次第に思春期ラブやら思春期自分探し・・・という部分に重点が置かれるようになると、途中から読むスピードが落ちてしまったのですが、終わりが近づくにつれて再びスピードアップしていきました。
なんでしょうね、「そんなに思いつめなくてもいーじゃん!人生まだまだこれからなのよっ!?」って思える大人の自分と、「ううう分かる、分かるよその視野狭窄ぶり!大人は分かってくれないって、本気で思ってるんだよね!」と思う子供の自分と・・・そんな自分に左右から引っ張られながら読んだ、というかんじです。
作者がまだ20代の作品だからでしょうか、テンションも非常に高いです。でもそのハイテンションぶりは分からなくもない。まだ若者だと思って、まだ学生気分を引きずっている今読むと、非常に懐かしさと(ここまでリア充じゃありませんでしたが)羨ましさと(もう戻れない青春!)微笑ましさ(分かる分かるよー、君たち若いねえって感覚)に襲われるシリーズでした。

個人的にはファンタジー要素のない学園コメディとして、軸がぶれることなくラストまで突っ走ったということが印象的。メインとなる登場人物も5人で、構成としてはいたってシンプルなんですよね。一方通行・片思い路線・・・というのは、ある意味流行といえば流行なのかも。
ううん、でも男性向け萌え路線に行くわけでも女性向け美少年路線に行くわけでもなくあくまで「ラブコメ」として正統派であった、というところに志を感じました。

アニオタの私としては、アニメ版の「動き」の良さ、テンポの良さを評価したいです。
原作は原作として、アニメ版では描ききれなかったキャラクターの内面描写・・・ですかね。個人的にはみのりんとあーみんの二人というのは、この二人を主人公に持ってくるならば、非常に古典的で正統派な少女小説が書きあがるくらいのキャラクターだったと思いました。

wikiで見てみると、作者はこれに『うる星やつら』『めぞん一刻』の世界が流れている・・・と言っているそうです。学園コメディといえば高橋留美子なので、分かるところもあります。でも『とらドラ!』はあくまで流れていく時間にあわせてキャラクターも変化していく話なので、どちらかといえば『めぞん一刻』なのかなぁ。個人的には永遠なる学園生活モノも好きですけどね。

『とらドラ!』はただの学園ラブコメで終わるのではなく、高校生が高校生なりに迷って考えて、流そうとしたりあがこうとしたり諦めたり・・・でも結局真正面から立ち向かったり。そういう部分をしっかり描いた、という点で、いかにも今風のラノベでありながら、まっとうな思春期青春小説だと思います。

とらドラ!1とらドラ!1
(2006/03/25)
竹宮 ゆゆこ

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とらドラ! Scene1 (通常版) [DVD]とらドラ! Scene1 (通常版) [DVD]
(2009/01/21)
釘宮理恵間島淳司

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最終的にシリアスにもっていかれたTVアニメも、でも作品としてはいい作品だったと思います。個人的には萌え系までいかないけれどしっかり可愛い絵柄と、丸っこくて動きのいいアクションが良かったなあ。色彩も柔らかくてよかったです。
あとはやっぱりみのりんこと堀江由衣がいい仕事したと思いますよー!
お気に入りはもちろんみのりんとあーみんでした。担任の先生もね。


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