フナフナベイベ

徒然に一人語る読書感想文。 雑食ですが趣味嗜好はかなり偏っておりますのでご注意を。

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2009-02-11-Wed-22-30

庵堂三兄弟の聖職

庵堂三兄弟の聖職/真藤順丈/角川書店

第15回日本ホラー大賞受賞作、だそうです。
でも全然怖くなかったので大丈夫。あ、グロい描写が苦手という人にはあんまりオススメしないかもしれません。といってもそれほどとんでもなくもないけれど。
以下、あらすじ。

庵堂家の稼業は、少々変わっている。
それは、亡くなった人間の人体(骨、皮)を使って遺族のために日常用品を作るという「遺工」というものだった。
先代亡き後稼業にいそしんでいるのは、人嫌い長男・正太郎と、あちこち放浪した末に実家を手伝っている暴力三男・毅巳。そして今日、先代の七回忌にあわせて数年ぶりに東京でサラリーマンとして働いている次男・久就が戻ってきたのだ。
久しぶりの三兄弟の再会に喜びを隠せないブラコン・正太郎に、実家に対してどこかよそよそしさを感じる久就、そして何故か恋人との仲がうまくいかずにイラつく毅巳。
三者三様の再会だったのだが、それぞれの思惑を裏切って、とんでもない依頼が舞い込んでくる。
前代未聞の依頼に亡き父の残した写真の謎、そして消えた恋人の秘密。
遺体が引き寄せたように様々なものの仲介で、三人の心はそれぞれに決着をつける。
それぞれの、形で。

というわけで、「ホラー」といえども全く「ホラー」ではないお話でした。
こうみえて怖い話は苦手なのでよかったです。
帯には「選考委員、大推薦!」とありますが、よくよく巻末の解説を読むと、他の候補作とも結構拮抗していたみたい。それはともかく、キャッチーな題材だけでなく、読みやすい文章と勢いのあるストーリーに、久しぶりに一気読みしてしまいました。
うん確かに面白い・・・けれど、難をつけるとすれば(ひねくれものでごめんなさい)、三兄弟の出生の秘密はそれほど引きずるネタでもなかったかな。すぐに予想できることだし、個人的にちょっとどうかなーと思ったのは毅巳の言葉とラストの行為ですかねえ。あんなに「糞」って言わせる必要あったのかなぁ。あと腕もね・・・少々演出過剰な雰囲気が鼻についたのは、私だけでしょうか?
まあそんな瑣末なことは置いておいて、長男のお茶趣味とかブラコンぶりとか、一人ちびっこい(もとい、平均)次男とか、女次第で精神状態が変わる三男とか・・・キャラ揃い踏みなことで。なんとなくラノベ臭を感じなかったといえば嘘にもなりますが、シリーズ化したら人気が出そう。
そんなかんじでございました。

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2008-12-15-Mon-22-51

のぼうの城

のぼうの城/和田竜/小学館

今年とっても書店で目を惹いたこの本。
気にはなっていたものの、ついにお友達に貸してもらいました!

時は乱世。
秀吉が天下統一をはかり、大手をかけようとしていたその瞬間。関東の雄・北条氏への一手として目をつけられたのが、関東七名城のひとつ、忍城(おしじょう)であった。
到底敵うはずもな天下の秀吉軍に対し、忍城の主・成田氏は長きにわたる北条氏への忠誠と、領民と自身の身の安全との苦渋の選択を迫られていた。幾人もの豪傑をかかえる忍城とはいえ、何倍もの数の敵軍と真っ向勝負を挑むのは、暴挙以外の何物でもない。降伏やむなし、との意見に傾きかけた武将たちの中で、唯一交戦を唱えたのは、常日頃「でくの坊」と揶揄され、百姓からさえも「のぼう様」と呼ばれている城代の嫡男・成田長親だった。

という、お話。
戦国戦記ものですね。実は読み終わるまでてっきり忍城はフィクションなのかと思っていたら、なんとちゃあんと歴史資料も残っている実在した城なのだそう。
末尾には参考文献の数々も列記されており、きちんと調査された後がみられます。・・・とはいえどこまで史実と重なっているのかは大変疑問です。だってキャラたちまくりーの、インパクトありまくりのせんじゅつーの、なんですもん。

まず、のぼう様。
恵まれた体躯をもちながら、武にも智にも通じないうつけもの。
唯一のとりえは愛嬌。
次に、丹波。
のぼう様の幼馴染。
己の弱さを自覚しているが故に誰よりも強くある武士。苦労人。
次に、和泉。
なにかにつけて丹波に張り合う、まるで無頼者のような武士。子沢山。
次に、靭負。
女のような顔をした若武者。
体躯に劣る分を知略でカバーする、自称・戦の天才。
そして、甲斐姫。
男以上の力を持つ美貌の姫。
その腕は、皮一枚を残して男の首を両断するほど。

どうですどうです、このキャラそろいっぷり。
思わずSAMURAI7的なアニメ絵を想像してしまいました。
キャラクター以外でも「浮き島」との異名をとる忍城に、戦に巻き込まれる百姓たち、敵方の石田三成サイドの人物たちもそれぞれにクセがあって、ビジュアル的にもインパクトのある水攻めの画・・・いやいや、これはなんとも痛快な戦国エンタテインメントです。

最初こそ波に乗りにくかったのですが、戦がはじまってしまえば後は転げ落ちるように読めてしまいます。普段時代小説は読まないという人でもきっといけるでしょう。ラノベしか読まないって人でもいけるかもしれません。それくらいのキャラ立ちっぷりですよ。
元々映像作品の脚本として書かれた作品?とかで、なるほど映像化を意識しているのだろうなと思わせる派手な描写も愉快痛快。
黒澤映画的なスケールで映像化したら、ハリウッドが大喜びしそうなジャパニーズ戦国絵巻が出来そうですね(ごめんなさい黒澤あまり知りません)。

そこで実写版の妄想をしてみたのですが・・・
のぼう様、あんまり浮かびません。ぬぼーっとした人がいいんですよね・・・うーん・・・もうちょっと若かった岸辺一徳とか?あ、靭負は想像しましたよ!もうちょい年が上なら武田真治とかどうかなーっと思ったんですが、初陣の若武者という設定なので、見目も麗しい林遣都くんとかどうでしょう(笑)ちょっと若すぎるかな。あんな綺麗な顔した子が人を食ったような戦略をたてる、なんて想像しただけでよだれものなんですけどね。

のぼうの城のぼうの城
(2007/11/28)
和田 竜

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しかしこの作品がヒットした理由のひとつは間違いなくこの表紙でしょう。
スバッと人目をひきますもの。編集さんはいい仕事しましたねえ。
なんとも楽しく読めた作品でした!
2008-12-09-Tue-22-57

美しいこと(上・下)

えーと、今回の感想文はいわゆるBがLする話です。
苦手な方はターンバックをオススメします。

でも一言だけ言わせていただければ、BがLする話だって幼女に萌えちゃう話だって平凡な男子学生が突然ハーレムに陥る話だって、現代日本には途方もないほどのバリエーションがあるし、もはやそれは安易にジャンル分けさせてしまうほど単純なものじゃないぞ、ってことですかね。
なんと言葉をくだいても、BL嫌いの人にBLを読めとは申しませんが。
BLというだけで嫌悪感を持つにはもったいないような話も山のようにあるのだぞ、ということです。
それはきっとどんな分野のどんな作品にも言えることなのでしょうけどね・・・

心のキャパは広く持ってたほうが、絶対世の中楽しいですよ。
では感想は以下に。

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2008-12-04-Thu-23-00

新選組藤堂平助

新選組藤堂平助/秋山香乃/文春文庫

一ヶ月くらいチビチビと読んでいたこの本、今晩ついに読了致しました。
いや、読みにくかったというわけではありません。むしろ秋山さんの文章は時代小説にしては読みやすいほうだと思います。
なかなか読み進められなかったその理由はただひとつ、「最後を見たくなかったから」。
そもそも新選組ファンなら「藤堂平助」がどんな人かくらいは知っています。試衛館時代からの初期メンバーの一人であり「魁先生」と呼ばれた剣士であり、ご落胤の噂もあった出生不明の人物で、そしてその悲劇的な末路。

秋山香乃作品はほかにも2つほど読んだことがありますが、そのどちらも非常に登場人物への愛着が感じられる文章でした。それは本作においても例外ではなく、藤堂や藤堂の同僚でありかけがえのない友人である永倉、そして藤堂にとって人生を変えた人である土方、敬愛する先輩だった山南、ともに高台寺に移った斉藤、恩人である伊東・・・たくさんの人たちが、時には軽快な会話で、時にはその時代を精一杯に生きた人物として清冽に描かれます。
たくさんの人がそれぞれの信念のもとに、あるいはただ時代の波に巻き込まれて命を落とした時代。
彼らが輝いて見えるのはそのせいかもしれないけれど、だからこそその短すぎて鮮やかすぎる人生がいとおしくてなりません。
革命への意思と、新選組への愛着。どちらも真実でありながら、相反するものになってしまったそれが悲しいです。

細かいところを言うと、山南さんが右手に負傷して以来剣が握れなくなった・・・というのはこの本で初めて目にした設定で、これはオリジナルなのかなーと思いつつ、ふむそれも説得力があるなと思ったり、また平助が一時新選組を離脱していたというのもアリかなー、と。でも幹部といえども土方さんがそんな例外を許すかな?
私の新選組知識は9割が漫画と小説とドラマなので、いまいち史実とフィクションの区別がつきません。

新選組藤堂平助 (文春文庫)新選組藤堂平助 (文春文庫)
(2007/11)
秋山 香乃

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書店の紙カバーをつけて読んでいたので、改めてこの画像で表紙を見直しました。
橘の絵柄に、ちょっと胸が熱くなりました。
2008-11-27-Thu-23-01

美女と竹林

美女と竹林/森見登美彦/光文社

奇想天外な作風で若い女子に大人気の(?)森見登美彦の処女エッセイ・・・エッセ・・・イ?という本。それがこの『美女と竹林』です。

タイトルだけでは、なにがなにやら分かりませんね。
はい、読んだ後でもこのタイトルの説明は上手くできません。
とりあえず、森見氏は竹林が好きらしい・・・で、『美女と竹林』の連載(雑誌連載だったそうな)のネタとして、知人所有の竹林の手入れをさせてもらうことにした、と。
果たしてこれは森見氏と竹林とのめくるめくドキュメンタリーなのか、それともそれすら森見氏の机上の妄想なのか?そのへんすら判然としないこれは、半エッセイというべきでしょうか。
ともかく森見氏の語る妄想竹林ビジネス論と、それに付き合わされる・・・いやむしろ進んで付き合っている森見氏周辺の物好きな人々との愉快な交流を楽しむべき本作。

気楽に方の力を抜いて、ハハハーンと読みましょう。
いやー森見さんて(多分)頭いいから、シュールすぎて付いていけないかもねと思っていたのですが、いざ読んでみると予想以上に面白く読めました。読んでみるとなんだか親近感も持てたり。森見氏と友人の明石氏のやり取りは楽しそうで面白そうだわと思いつつ、でも自分のそれも傍から見ると似たようなものかなと思っておかしくなったり・・・
私も「婿を大事にする女だ」と誰でもいいから伝えてほしい。そんな気分になりました。

いやいや、サラッと愉快な一冊でした。
森見氏の著作が世に出る頃のエッセイでもあるので、(『夜は短し~』とか)森見氏の作品をいくつか読んだことのある人なら一層面白く読めるのではないでしょうか。

美女と竹林美女と竹林
(2008/08/21)
森見登美彦

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桂駅で阪急蕎麦を食べたくなりました。
やたら桂がフューチャリングされているので(森見氏が伐採する竹林が桂にあるそう)、周辺にお住まいの方はにやりとするかも。
いやー京都って地名だけで若干のロマンがありますよね。強いなーと思います。
2008-10-22-Wed-23-15

象られた力

象られた力/飛浩隆/ハヤカワ文庫

時間かかったけど読みました、初・飛浩隆!

SFでございます。
苦手なSFでございましたが、先日の神林御大よりも文章的にはスムーズに読めました。とはいえ時間がかかった原因は、その豊潤すぎるイメージの世界のせい。
濃厚すぎる世界観の渦に飲み込まれるまでに、ちょっとだけ足踏みしてしまいました。

えーと、本作は初期~中期の短編集らしいです。
収録作品ごとに、簡単な感想を。

『デュオ』
ある人物の手記という形で描かれた、不世出の双子ピアニストの殺害という謎をおった音楽SF。
・・・ということですが、私としては「ミステリ」のように感じました。作中時間も収録作品中唯一の現代(そして地球)ということで、一番難なく読めました。
音楽モノも好きですし。音のイメージと、ありえない存在が確かにそこに居る、というイメージがびんびん伝わってきます。

『呪界のほとり』
「呪界」と呼ばれる世界のほとりに飛ばされた、竜とともに旅をする男の珍道中。
珍道中というだけの、ユーモラスな雰囲気が全体に漂っています。なんだかひょうきんなSFアニメの第1話、ってかんじで楽しく読めました。
解説によるとシリーズ化も考えられていた?とかで、なるほどなーと。

『夜と泥の』
テラフォーミングされつつある惑星を舞台にした、奇妙な夜の出来事。
自然描写とか森に住む虫たちのうごめきとか、非常に有機的な事象が細かに描写されていて、てっきりそういう自然賛美的なお話なのかと思いきや・・・。
最後はちょっとゾクリとします。

『象られた力』
表題作。
でも正直一番読みにくかったです。何が読みにくかったって、そのイメージの世界に入るのに時間がかかったことですよ!
文様・イコン・図形・エンブレム・・・作品全体に散りばめられた世界観を彩る図形の世界に馴染むまでに、じわじわと3日くらいは出だしでつっかかてしまいました。作品も後半にはいってきて、怒涛の展開が始まってしまえば一気だったんですけどね。図形に触れるということ、それによって感情が揺さぶられるということ、全ての具象は力の表れだということ、目くらましのような図形の渦の中で、そういったことを「言葉」によって読み手に訴えるという文章の力にやられましたねー。
ああ、「補遺」とされたおまけが個人的に好きでした。

全体と通して思ったんですけど、普段あまりSFを読まない者からすれば、「けっこうミステリ的展開があるので読みやすかったな」ってトコです。オチがつくというか何というか、「転」があって「結」がある、というか。ぐわっと展開して、シュッと落ち着かせてくれるところがすっきりした読み心地です。
『象られた力』が読むのに時間がかかったとはいえ、それは決して文章的理由ではないことは言っておきたいところ。

貸してくれた友人が「この人の日本語は綺麗だ」といっていたのをおもいだして、『夜と泥の』を最初のほうを声に出さずに音読してみたのですが、なるほど確かに滑らかなリズムでした。

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)
(2004/09/08)
飛 浩隆

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それにしても年々作品世界に入り込むまでに時間がかかるようになってしまいまいした。人はこうやって頭が固くなっていくのでしょうか?恐怖です。もっと、もっとイメージの世界を!
2008-10-17-Fri-23-17

寺暮らし

寺暮らし/森まゆみ/集英社文庫

タイトルでなんとなく手にとった本。
といって、修行僧になるだの寺に入り婿するだのといった話ではありません。
「お寺の境内に建てられた借家をかりてみた」という、バツイチシングルマザーライターさんのエッセイです。

東京都内の中心部、境内地だということで木々に囲まれ、お寺さんの畑の野菜は頂いて、なんとも夢のような暮らし。おまけにお寺の構えに恐れをなすのか、押し売り営業マンが全くやってこないのだ!
・・・とはいってもメリットには当然デメリットも伴うわけで、毎朝の読経が聞こえたり盆と彼岸の頻繁な来客にあわてたり、ということもしっかり書いてあります。

段々と内容が「都心の建物・下町風情の維持とは」みたいになっていったので(もっとも、「下町」という言葉にはかなり厳密な定義があるらしい)、タイトルから想像するほど「寺暮らし」が前面に出ているわけではありませんでした。古い建物や江戸情緒にも興味があったのでそのへんも面白く読めたのはかえってよかったですが。

筆者の借りた家の大家さんは浄土宗のお寺さんだということなので、けっこう一般家庭に近い感覚だったのもよかったんじゃないでしょうか。段々お寺さんだという距離感もなくなっていってる・・・かんじ?
まあその環境が他人事だと思えなかった私には、大家さんがいい人みたいでよかったなぁと思うばかりです。
でもお墓って怖いとかお経って不気味、って人にはどんなメリットがあっても住みたくないとこだろなぁと思いますよ。その感覚もはや私には分かりませんが・・・

そうそう面白かったのはもうひとつ、巻末の解説です。
筆者に対する「憧れ」というか・・・東京っ子の東京育ちという、その生まれや育ちに対してはっきり「いいなあ」と言ってしまうほどの「嫉妬」めいた感情が隠さずに書かれていて、その正直さに胸うたれました(笑)ああ分かります、その気持ち!
簡潔で回りくどさがないのに、ふっと現れる情感とか言葉の美しさとか。そういうのを持って生まれた人には単純に羨ましさを感じます。

寺暮らし (集英社文庫)寺暮らし (集英社文庫)
(2006/06)
森 まゆみ

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今度母にも読ませてみようかなと思う本でした。
どんな感想を述べるでしょう。「都会のお寺はいいわね」とかかな?
2008-10-07-Tue-23-27

狐と踊れ

狐と踊れ/神林長平/ハヤカワ文庫

アニメにどっぷり浸かっている今日この頃、気を取り直して借り物の文庫本など読んでみました。
SFだけど短編集だし、まあいけるかな、と思って気軽な気持ちで読み出したのですが・・・びっくりです。


『敵は海賊』って、海賊が主役じゃなかったんだ・・・っ!!!

かるく10年以上勘違いし続けていた自分に驚きを禁じえません。
タイトルが「敵は海賊」って言ってるんだから、自分たちは海賊と戦うんじゃんね。何の疑いもなくネコ型宇宙人や愉快な仲間たちが暴虐の限りの海賊行為で楽しく旅をする愉快な話だと思ってました・・・。

・・・どうしましょう、一冊読みきったのに、あまりの衝撃の事実に他の感想がぶっとんでしまいました。
えーとこれ初期短編なんですよね?
人間の体から胃が飛び出しちゃったり、ぐるぐるまわる時間に気が狂ったり、なんというか、気軽に読もうとしたつもりが意外に気力を使いました。結構とんがってますね。

個人的にはダイア・ショックくらいが読みやすかったです。

・・・それにしても、海賊じゃなかったなんて・・・。

狐と踊れ (ハヤカワ文庫 JA 142)狐と踊れ (ハヤカワ文庫 JA 142)
(1981/10)
神林 長平

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2008-09-18-Thu-00-06

桜姫

桜姫/近藤史恵/角川文庫

あらすじを知って買いに走りました。
だって物語の舞台が梨園で、作中には『桜姫東文章』も登場するんですって!
最近はまりっぱなしのマ●ロ●Fの参考資料(なんのだ)になるんじゃないのー?なんて思ってうっかり買っちゃいました。
知らなかったんですが、これはシリーズものだったんですね。
なんだかもうキャラクターが出来上がってる感がありました。とはいえ、読むのに不都合はありません。


笙子は大物歌舞伎役者の一人娘。
愛人の子だった笙子は跡取りだった正妻の息子・音也の死をきっかけに、本家にひきとられる。しかし実の父とうまくいかず、一人暮らしをはじめてからはますます家に寄り付かなくなっていた。
しかし家を離れた理由はそれだけではなかった。
笙子は繰り返し、夢を見るのだ。
写真んでしか知らない兄・音也の首を絞めて殺す夢。
笙子は疑っていた。病死とされていた音也は、実は殺されたのではないか。
殺したのは子供だった自分ではないのか、と。
自分自身の記憶に疑問を持つ笙子の前に現れたのは、若手歌舞伎役者・中村銀京。彼は幼い頃、兄・音也の遊び仲間だったという。
共に音也の死の真相を明かそうと誘われた笙子は、真実を知る覚悟を決める。
たとえそれが、自分にとってどんなに辛い事実だったとしても。


ということで、歌舞伎をネタにしたミステリーですね。
あ、歌舞伎公演後に道具部屋で出演子役が死亡するというもうひとつの謎も描かれるのですが、本作のメインストーリーはあくまでも↑なので。
うーん、歌舞伎役者さんたちの中のことについてはなかなか興味深く読めるところもあったのですが、ミステリー的には・・・・うーんどうよってかんじでしたねー。

歌舞伎といえば先祖代々の歌舞伎の家柄の人たちのもの、という印象がありますが、実際は全くの一般の人でも歌舞伎役者になれるそうです。それ専門の養成所があるんですねー、そりゃそうか・・・。とはいえやはり主演だとか大きな役柄は「名家の生まれ」の人たちの専売特許らしく、外の世界から入ってきた人たちは「大部屋俳優」としてその役者人生をすごすそうです。
もちろん相当な力量があれば「養子」という扱いになって、また違うそうですが、それはあくまでも「かなりの才能」があれば、というわけで。
やっぱりなかなか難しい世界のようですね・・・生まれで全てが決まる世界ってどーなん、とも思いますが、やはりそういう家柄に生まれた人たちもまた後ろ指をさされないために幼い頃からの稽古を重ねてきた人生というものがあるわけで。
いやはや、伝統芸能ってミステリアス。
探っていけば、戻れないくらいに奥の深い世界だよなーっと思いました。

ミステリ的には・・・「子役の死」ってネタはこれに必要だったの?と言わざるを得ません。
笙子と音也がらみのことについても、もっと上手くミスリードしてほしかった。
あっそうふーん、ってかんじです。
でもシリーズものという前提があるんであって、他の本を読んでからこれを読むとまた違った印象になるのかもしれませんね。

桜姫 (角川文庫 こ 19-2)桜姫 (角川文庫 こ 19-2)
(2008/02)
近藤 史恵

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2008-09-15-Mon-21-42

夜愁

夜愁/サラ・ウォーターズ著 中村有希訳/創元推理文庫

結構前に読んだ本の感想です。
翻訳モノってあまり読まないのですが、唯一買っちゃう作家がサラ・ウォーターズ。相性がいいのかもしれない・・・それとも訳があうのでしょうか?翻訳モノだということを意識せずに入っていけるんですよね。そして今回も一気に読んでしまいました。

物語の舞台は第二次世界大戦終結も間もないロンドン。
登場人物は戦争の爪あとも残る大都市で、それぞれの心に癒えようのない傷を抱えて生きていた。
病院の屋根裏に住むケイ、
女流作家のジュリア、
結婚相談所の職員ヘレンとヴィヴィアン、
服役後工場で働くダンカン。
彼女ら、彼らは自らが知ることのない縁によって、時に不思議な関係を持ち、時に全くの無関係に生きている。ただ自分の信念と、感情によって。時にそれが自分でも制御できない暴走をはじめ、結果として後悔することになったとしても。

作品中の時間の流れは大戦後(1947年)から始まり、徐々に過去にさかのぼります。
はじめはまったくバラバラに思えた各人の関係が過去にさかのぼることによって明らかになり、「ああここでこの人とこの人が出会って・・・この人は昔こうだったんだ・・・」という風に、読み進めていくうちに冒頭の各人の状況が理解できるという流れになっています。
それがこの作品のミステリー的なところでしょうか。

『半身』、『茨の城』と、ガッツリとした世紀末ミステリーを描いてきたサラ・ウォーターズが一気に時代を現代にして書いたこの作品は、時代が20世紀になったというだけが目新しいわけではありません。
ゴシック的な世界観で一人あるいは二人のヒロインが謎に巻き込まれ、葛藤しながらも前進していくという前2作と違い、この『夜愁』はメインとなる人物が沢山おり、その数だけ視点がバラけます。
また核となる殺人や犯罪があるわけではなく(人死や犯罪まがいのことはありますが)、あくまでもそれぞれのキャラクターの人生を平行して描くことによって奥行きをだしている、というか。
『茨の城』みたいな昼ドラ的めくるめく展開、というのは期待しないほうがいいかもしれません。まあ『夜愁』も十分ドラマチックですが。

そして舞台となる時代が19世紀末から大戦前後に移行したからといって、書き込みに変化があったというわけではありません。第二次大戦なんて現代の我々から見れば十分歴史的。その時代のロンドンの情景描写は、十分に読み手の想像力をかきたててくれます。
煤や砂埃にまみれ、都市ならではの喧騒と交錯にまみれた世界が、まるで映画を見ているように。

もちろんサラ・ウォーターズ特有の「女性同士の恋愛感情」もたっぷり描かれます。本作は特にそのへんの描写に力が入っていたかも。三角関係だったり、そういう女性同士の(あくまでも)友情だったりとか、そう例えば「スカートをはきたくないがためにガソリンスタンドで働く」なんてキャラクターも登場するのですが、そういう些細なところにも感心するのです。

大戦前後、ということで、本作は全体的に(いやまあサラ・ウォーターズの他の作品でもだけど)暗い雰囲気です。後半以降、空襲におそわれるロンドンの描写はなかなかに凄惨。
でもだからこそ、最後のシーン・・・作中時間としては最も「過去」にあたるシーンの輝きが、素晴らしいものとして印象に残ります。
運命の相手と出会ったという喜びと感動のシーン。
しかし読み手としてはその後の二人がどのような結末を辿るのかをすでに知っているわけで、だからこそいっそうそのシーンの輝きが切なくて・・・。

あー、サラ・ウォーターズの次作も楽しみです。
買っちゃいますねえ、きっと。

夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)夜愁 上 (1) (創元推理文庫 M ウ 14-4)
(2007/05)
サラ・ウォーターズ

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